34パーティー
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数の強いワインを振りかけて点火しフランベしてやる。
「あの、白いごはんを下さい」
もう意識が飛んでしまい、瞳孔が開いている栞は、残念な子だと思われようがどうしようが、白いご飯と一緒でなければ肉を食べられなかった。
どんな高級なおかずでも、少し齧って味が染みた飯を掻き込んで食う、外国人には嘲笑の対象でしか無い食文化だが、日本人として産まれてコメを食ったからには、この行為の良さが身に染みているはずである。
「ええ、そうしましょう」
陥落した秋子も立ち上がり、肉を食うには米の上に置いてから、の常識が二十年の生活で身に付いてしまい、恐ろしい罠からも逃げられなかった。
「おい、白い飯だぞ、何年ぶりだ?」
「う〜ん、七年ぶり?」
「わ、私にも米の飯を……」
五穀断ちして来た連中にも米が出され、堕落の一途を辿っていたが、一人だけ泣きながらサラダを食っている草食動物もいた。
「お待たせしました、極上のサーロインでございます」
切り分けられてフォークでも箸でも食べられるステーキが、塩コショウとバターだけで出された。もう人類を堕落させるには十分な破壊力を持っていたが、この匂いに耐えられず、やって来た野獣が一匹。
「おや、名雪様、たった今ステーキが焼き上がった所でございます、宜しければご一緒にどうぞ」
自分の部屋でドナドナを無限ループで歌っていた名雪は、信じられないほど香ばしいガーリックの匂いに釣られて、自分の出生の秘密や、母親と恋人の関係などより重要な「食欲」に押されて、天の岩戸を開いて出て来てしまった。
「…名雪、もう泣かなくていい、私もずっと「忌み子」と呼ばれて来た。貴方は必要な子、誰かのコピーじゃない、皆んながいらないと言うなら私が貰う」
珍しく饒舌な舞に話しかけられ、感激する名雪。でも舞の肉は1ミリも分けてもらえなかった。
アマノウズメの踊りやタヂカラオの腕力より強力な匂いで引っ張られてリビングに入った名雪は、秋子の側や祐一の近くには行きたくなかったので、あこがれの川澄先輩の隣をこじ開けて座った。ケツ圧が二人分なので祐一と月宮真琴が押し出され、野菜のボウルを持って秋子と美汐がいるテーブルに移動した。
(((((おふううううっ、らめっ、らめええええええっ……)))))
栞も泣いていた、名雪も泣いていた、秋子も泣いていた、祐一も泣いていた、美汐も泣いていた、佐祐理の家で食べたことがある舞も、母に食べさせてやりたくなって泣いていた、例の三人も、米の飯をたらふく掻き込みながら泣いていた。
数枚ずつ焼き上がり、一人に出されるのは数切れだったが、次のステーキも焼かれ、今度は調味料が違っていた。マスタードソースである。
(なんちゅうもんを、なんちゅうもんを食わしてくれたんや、海原はん)
(ぎゃああああああっ!)
(許して
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