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KANON 終わらない悪夢
34パーティー
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止められていた。
(やはりこの娘はお嬢様を害するような真似はしないか?)
 台所側のテーブルでは、奥様から注意された通り、明らかに純血の妖狐と思われる娘が、秋子様を上回るような力を放出しながら猛り狂っていた。その隣には天野の娘が平然と座り、妖狐に気負されることもなく話をしている。
(あの娘は直系か? だとすると四分の一)
 名雪様がいないのを不思議に思ったが、二階から悲しそうな心の声が聞こえたので、この状況に怯えたか、場の空気から出生の秘密を知らされて落ち込んでいるのだと思えた。
(後で飲み物と食べ物でもお持ちしよう)
 落ち込んだお客様を元気付け、もてなすのも執事の役目と思い、名雪の嘆きを取り除く方法も探す。
 そこで不注意な娘がテーブルからグラスを落としたが、お嬢様が手で追いかけ、生身の体は間に合わなかったが、精霊の腕が追い付いてグラスを掴んだ。
「まあ、お姉さま凄い」
「佐祐理は最近できる子になったんです」
(お嬢様ぁ……)
 以前のようにドン臭いと言われ、何かと世話を焼いてやらねば普通の生活も難しかった頃を懐かしみ、異形の化け物になってしまったお嬢様を不憫に思う。
 しかし、巨大な災厄が起こり、伝承すら残らない破滅が招かれた時、巫女として選ばれた娘だけが生き残り、人類として命を繋いで来た過去を思い、お嬢様と一弥様は今度の災厄の後も生き残る存在となれたのかもしれないと感じた。
(洪水伝説、トバ火山、人類は過去五度滅びたと言われるが、今度生き残るのは?)
 狭い室内を見渡し、60億分の10程度の天文学的な確率の中に、お嬢様と一弥様が選ばれ、方舟に乗れる権利を貰えた奇跡には感謝した。

「グラスは行き渡りましたか? それではパーティーを始めましょう、カンパ〜イ」
「「「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」」」
「今日が記念日の皆さん、おめでとうございます。佐祐理はとうとう舞と結ばれて、一弥、いえ、祐一さんとも結ばれて、もうすぐ一弥を産んで取り戻す予定です。はい、舞もお願い」
 舞とガチレズなのがバレても構わないのか、ほぼ全員自分の妹にして同じ穴の狢にしてしまったので公表されても構わないのか、モロバレだった二人の関係を堂々と宣言した佐祐理。機嫌が良いので一時祐一の名前も言って一弥生誕の祝も口にした。
「…約束してた子と10年ぶりに再会した。心も体も融け合った。佐祐理とも結ばれた…… 嬉しい」
 珍しく嬉しいとまで言って感情を表す舞。だが祐一から「血がつながってる」とか「実の姉さんだったからもうできない」などとホザく声が聞こえたが当然却下。
 血がつながっていようが異母兄弟であろうが、融け合って一つになって子供も何人も作り、それが嫌でも「絶対に逃がさない」と思っている怖い姉。
「私は、初恋の人と再会して結ばれました。
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