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機動戦士ガンダム SEED C.E71 連合兵戦記(仮)
第9話 聖天使出撃
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ルを使用していたこともあって、艦内格納庫には、グゥルは、1機しか残されていなかった。

このグゥルも機械故障で出撃不能となり、修理の為艦内に残されていたものである。
ちなみにノーマ小隊が使用していたグゥルは現在補給と修理作業中だった。

「これより出撃する!進路は?」
「進路クリア、発進どうぞ!」

はきはきしたオペレーターの声が彼女の耳を打つ。
彼女は、機体のスロットルを最大にした。

グゥルに乗ったシグーが、リニアカタパルトの力を得て空へと射出される。

「ノーマ・アプフェルバウム シグー出撃する!」

巨大なバッテリー仕掛けの白銀の騎士は、鈍色の空へと駆け上がって行った。


グゥルに乗ったノーマのシグーは、途中までは地を這う様な低空飛行で、市内が見えてきてからは少し高度を上昇させて、敵部隊の潜伏する放棄された都市に接近した。

都市から少し離れた場所には後退してきたウーアマン中隊の姿が確認できた。

先程まで激しい戦闘が繰り広げられていた市内は、銃声一つしない静寂を保っていた。
だが、市内の建築物に開いた大穴や各所からあがる黒煙は、そこが先程まで戦場であったことを雄弁に見る者に教えていた。

また内部には、孤立しているザフト部隊がいたが、それらを地球連合軍は殲滅することなく、放置しているようであった。

並みの部隊なら孤立している部隊を運用可能な戦力の全力をもって叩き潰すところだろうが、ノーマ達ザフト軍と戦っているこの部隊の指揮官は、孤立させた敵部隊の戦力を殲滅せず、最小限の戦力で監視、包囲することに留めて敵の支援砲撃や空爆を防ぐための盾として利用していた。
相手の指揮官の有能さに彼女は思わず舌を巻いた。

「…」
ノーマはシグーを市内へと向かわせた。

「酷いものね…」
搭乗者たる金髪の美少女は、自機の正面モニターに映る光景を一瞥して言った。

旧世紀に第二次世界大戦を引き起こし、ヨーロッパ全土を地獄に変えたナチス・ドイツの独裁者 アドルフ・ヒトラーとその腹心の部下で公私ともに交流のあった建築家 軍需大臣 アルベルト・シュペーアは、古代ギリシャ・ローマ建築の様に第三帝国が滅亡した遥か未来に廃墟となった後も建造物が美しい姿を留めていられるように、廃墟価値理論というものを考え、それをナチス政権の建設計画での建築物設計に適用した。

今のノーマには、それが痛いほど理解できた。
ギリシャの古代文明の栄華を残すパルテノン神殿やジャングルに呑み込まれても尚、美しさを保つカンボジアのアンコール・ワットが、ロシア正教の伝説にある、死してなお芳香を放ち、不朽を保つ聖人の遺体とするならば、眼の前の放棄された都市は、雑菌と外気に蝕まれ、悪臭を放つ醜い腐乱死体と形容出来た。


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