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機動戦士ガンダム SEED C.E71 連合兵戦記(仮)
第6話 偽りの囁き
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滅したエレノア隊の二の舞にはなりたくなかった。
2機のジンがザウートとその周辺に展開する車両の護衛としてその場に待機した。

「敵部隊進軍を開始!モビルスーツ10、車両12以上」
都市郊外近くの建物に隠れていた熟練の偵察兵は、興奮と修飾語を極力抑え、有線式通信機で報告した。
市内に工兵隊が徹夜で張り巡らせた有線通信網を通じて、それは各部隊に伝達された。


「急いで!」
即席の退避壕から飛び出し、廃墟の屋上の射点に付いたアンジェリカは、対物ライフルを2人の部下と組み立てていた。
ライフルを組み立て終わったアンジェリカは、集中力を高めるべく、ポケットから小瓶を取り出した。

瓶の中には、干した唐辛子が入っていた。アンジェリカはそれを口に含んだ。口一杯に舌を焼く様な辛さが広がる。
その横では体力を回復する為に部下の1人が栄養ドリンクを飲み干していた。

「いよいよ来たかぁ」
「ザフトはセオリー通りに来る!そこが狙い目だ!」
かつて大西洋連邦資本のピザ屋の食糧貯蔵庫だった地下の一室で、ガラント少尉はミサイルランチャーを肩にかけて部下達を鼓舞した。

「お前ら、逃げ場は確保されてる!だからビビるな!ケツをまくるのはまだ早いからな!」

別の地下壕でゲーレン中尉は、居並ぶ部下達に大声で叫ぶ、背水の陣の格言の様にわざと退路を断って
兵員の戦闘意欲を高める方法もある。
だが、この戦いは、友軍の撤退支援の戦いである。市内に立て篭もり、遥かに戦力が上の敵に囲まれているという状況では、退路が存在しているという希望を与えた方が、戦闘意欲を引き出せるとハンスは考えていた。
彼は、無理に戦場に踏み止まり、戦死するよりも次の戦いの勝利に向けて生き延びることが大切だと考えていたのである。

地球連合軍部隊は、ハンスと各部隊指揮官が組み立てた作戦計画の通りに行動を開始した。
市内に立て篭もる地球連合軍の中で砲撃の犠牲になった者は殆どいない、これは、彼らが都市内の地下空間に退避していたことが大きかった。

西暦期に勃発した第二次世界大戦の島嶼戦闘における最大の激戦である硫黄島の戦いでは、アメリカ軍は、3日間に渡り、爆撃機の大編隊や旧式戦艦を含めた水上部隊によって島全体に準備砲撃を加えた。
にも拘わらず、地下洞窟陣地に立て篭もっていた日本軍はまとまった戦力を保持し続けていたのである。

更にウーアマン中隊は、砲撃兵力が市内の広さに比べてあまりにも少なすぎた。
その為、支援砲撃の結果が単に市街地をさらに破壊したというだけの結果に終わったのは当然と言えた。

この住民が消え去った都市での地球連合軍とザフトの血で血を洗う戦いは、こうして約束されたのである。


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