提督はBarにいる×神薙改式編・その4
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さて、あの奇妙な物書きが忽然と姿を消してから3日。仕事の合間を縫って調査をさせていた連中から、ある程度の調査結果が纏まったとの報告を受けて、情報の共有を兼ねた報告会を開く事にした。
「え〜、先日話した通り我が鎮守府に不審者の侵入を許した。正体は不明だが、侵入者は侵入者だ。今後の対策も兼ねて調査報告を精査したいと思う」
普段は昼行灯気取りな俺だが、こういう事態の時は真面目に仕事をしている……本当だぞ?
「え〜、ではまず設備などの破壊や情報データベース等へのハッキングの形跡はありませんでした。機密資料等も同様です」
ふむ。明石の報告からすると、つまりは情報の漏洩の心配は恐らくないだろう、という事か。そうなってくるとあの青年の目的がますます解らなくなる。
「警備班も同様だよ。そもそも、そんな人が敷地内に入ってきた事すら気付かなかったし」
そう言ってふてくされているのは警備班長の川内。侵入者に気付けなかった自分にも、電探等を使って警戒していたのに気付かなかった他の警備班の面々にも苛立っているようだ。
「まぁ落ち着け。あの身のこなしからすれば相手も中々の手練れだった、気付けなくてもお前らの職務怠慢だとは思わん」
俺がそう言って慰めてやると、『そうは言ってもさぁ……』とまだブツブツ言っている。余程悔しかったらしい。
「しかしそうなると妙だな。あの小僧が一瞬で姿を消した説明がつかん」
険しい表情でそう語ったのは武蔵だ。俺もそれは考えていた……あの一瞬で姿を消したトリックを説明できない。
窓を破られたり、天井に潜り込まれた形跡は全く無かった。光学迷彩などの目眩ましも考えたが、非現実的すぎる。……いや、もっと非現実的な推論もあるにはあるのだが。
「……ちょっと、よろしいですか?」
おずおずと手を挙げたのは青葉だった。青葉にはナギーの語った経歴と、奴の残した本の調査をさせていた。
「何だ?妙な所でもあったのか?」
「いや、報告すべきが物凄く悩んだんですが……」
いつもなら嬉々としてそういうネタを語る青葉が言い澱んでいる。まるで有り得ない物を見てしまって、それを信じたくないとでも言うように。
「実は司令に預けられたこの本、発行元が存在しないんです」
一気にざわつく室内。俺が手を上げて静粛にさせて、青葉に報告の続きを促す。
「自費出版だと言う事で個人経営等もしている印刷所等も洗いましたが、ヒットは0件。そもそも、この本自体が存在しないんです」
存在を否定された本が、実際に目の前に存在する。この矛盾をどう説明しろというのか。
「案外、幽霊や化け物の類いだったりして〜」
誰が言い出したのか、そんな一言で動揺が拡がる。お前
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