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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第五話 僕自身の渇望
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「恋、ね……」
廊下に出た俺はそんな風に一人呟く。テレジアちゃんが客観的に見て人形に恋しているのはわかる。だけど、恋愛というものが、いや愛情に関する全てが僕にはいまいち理解できない。ライニは全てを愛しており水銀ですらマルグリットに恋をした。でも僕には分からない。何がそうさせるのか彼らがどうしてそこまで固執するのか、全く持ってわからない。
そもそも人の領域からある意味外れた僕では一生分からないことなのかもしれない。だからこそ、
「人形同士、傷を舐めあってるようにしか見えないな、僕には」
「そのような言い方をするとは、貴方は相変わらず酷いお方ですね」
振り返ると鍵を持ったヴァレリアがいた。彼とてテレジアちゃんに愛情の一種を向けている。それは一体どういうものなのか、気になるからこそ尋ねてみる。
「愛だとか恋だとかそんなものがそんなにも愛おしいのかい、正直な話僕には理解できないんだが」
水銀に対して友情と呼べるものは抱いているし、ライニにも似たよな気持ちはある。無論、誰かを憎んだこともあれば、尊敬したこともある。けれど愛情だけは今まで生きてきて本当に一度も感じたことは無い。
だからこそこの戦いを客観的に見つめ続けている部分もある。主観的になれない。ついでどうでもいいことだが友情のほうが尊いのではないかと感じてしまう。触れたことの無い感情と大切に思っている感情とではあそういう認識にもなるだろう。
「あなたは、誰かを愛したことは無いのですか?」
ヴァレリアが意外そうに聞いてくる。それはあれか、僕が理解できないことなんて無い、とでも思ってたのかね?
「無いとしか言いようが無いね」
もしかしたら万分の一以下の確率でそんな過去があったのかもしれないが、どちらにせよ在ったとしても記憶は喰われているのだから意味をなさない。だから僕にとって愛情は最も理解に遠い感情だ。
「ほら、言ってあげなくて良いのかい?人形を縛ってる鎖の鍵、取って来たんでしょ?」
「その前に少しだけお話し出来ませんか?」
何時に無く真剣に尋ねてくるヴァレリア。正直、面倒だが話くらいは聞いてあげるべきだろう。
「……ハア、テレジアちゃんが出てくるまでね」
「ありがとうございます。では早速なんですが、貴方は私がメッキに喰われるとそう仰ってましたね」
確かに言った。彼の望みはライニになりたいことだ。それはつまり、最終的にヴァレリアという存在を捨てラインハルトという別の人間になることを指し示している。それでは彼が救うことは出来ない。何せライニはテレジアちゃんを救うなんて考えもしないだろうから。
「そうだね、事実としてそうなるよ。今のままでは」
「一つ聞きたいのですが貴方は何故そのような事を私に忠告した理由
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