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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第五話 僕自身の渇望
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ることに。手首を拘束している鎖を外そうと腕を動かすと、それに気が付いたのか先程から聴こえてきた声が言う。
「無理に外さなくても後でヴァレリアが鍵を取ってくるから待ってな」
暗闇に慣れ始め目が見えるようになってくると先程から聴こえてきた声の主が見えてきた。
「あんたは…」
「見えるようになったかい、ああ良かったよ。今死なれても困るからね」
そこにいたのはアルフレートと名乗った人物だった。それにしても縁起でもないこと平然と言う。だけど実際そうなってもおかしくない状況だったし、生きていることも不思議だ。聖遺物が破壊されたのだから。
「一つ聞いていいか?」
「どうぞ、答えれる範囲でなら答えるよ」
「なんで俺は生きている?」
「聖遺物が死んでないからだよ。君は一つ勘違いしてるよ」
勘違い?それはどう言うことだ、聖遺物が破壊されても実際は死なないということなのか?
「その理は本当のものか?目で実際に見たのか、それとも誰かに聞いたのか。見たというなら結論を急いているし聞いたのだったら言葉を理解し切れてない。
簡単なことさ、ラインハルト殿は聖遺物を壊したのではなく、蓋をこじ開け、中身を抜き取っただけ。それじゃ聖遺物は壊れないから誰も死なない」
「つまり…」
俺とマリィが引き剥がされただけで、互いに無傷だということか。武器の破壊が直結して死ぬのではなくそこに込められた魂を壊されることで初めて身体も壊れるということ。だけど、
「そんな簡単に出来ることなのか?」
言うならばそれは豆腐を傷つけず容器を握りつぶす芸当だろう。そんなことが本当にあっさり出来るとは思えない。
「出来るからこそ、彼の手によって君は殺されてないんだよ。彼は君や他の人間とは格が違う。彼にとっては造作も無いことだよ。さて聞きたいのは一つだといったから他の質問にはもう答えないよ」
そう言った直後、彼はまるで始めから俺が居なかったかのように興味を失い持っていた本を読み始める。俺としては他にも聞きたいことはあったがコイツに聞くのはなんとなく憚られ沈黙した。
そうしてしばらく時間が過ぎたころ目の前のコイツ以外の誰かが部屋の扉を開けた。
「こんばんは、藤井君」
扉を開けてきた氷室先輩とこんな形で会いたくはなかった。
「思ったより、驚きはしないのね」
「ん、テレジアちゃん、何か御用かな?眠れないって言うならリザさんのところに行ったほうが良いよ」
「そんな子供じみたことじゃないわ、悪いんだけど一寸席外してくれる」
「……良いよ、でもヴァレリアが来るまでだからね」
「ありがとう」
そう言って彼は扉のほうまで行って部屋を出たあと、扉を閉じた。
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