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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第五話 僕自身の渇望
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チェロを弾いている女性は左顔面が焼け爛れ、フルートを吹く少年は右目が丸ごと抜け落ちており、指揮を取る壮年の男性は体が鉄か何かと融合している。彼らは全員からだの一部を失っている。
だから、私は直感的に理解した。これは死人の楽団なのだと。

「答えは?」

目の前に居るこの男性だけが異常なほど欠けているものが無い。まるで、まるで、この人と、この世界は

「地獄……」

「なるほど。変わらんな、あの男も」

だからこう言った瞬間私は違和感を感じた。今の私は情緒に溢れた感情を思考を持っている。本来知るはずも無いことだ。
今こんなことを考えてる時点で普通じゃない。

「無感であれば痛み(かんき)はない。私の世界においてそれは許さん。言ったろう、愛し方を教授すると」

だから分かった。これは恐怖。そして、今の私にはその原因が分かる。

「あなたは、たった一人……」

「かもしれん」

「卿は大海に落ちても溶けぬ宝石。私は大海を染め上げる墨のようなもの」

共に一粒、一滴だけど、違いはその影響力。

「覇道と求道、カールはそう言っていたな。前者は私、後者は卿だ。私としてはそちらのほうが眩しくみえるよ」

分かってはいけない。だけど嫌になる。わかってしまう。

「覇道の激突を私もカールも望んでいる。故に彼が居て、彼を愛する卿が要るのだ。問おうマルグリット、この地獄(わたし)をどう思うね」

「怖いよ」

わたしは生涯初めて拒絶というものの意味を知った。黄金は笑う。その一言を待ち望んでいたように。

「ならば共に天を戴かず―――祝おう、ここに宣戦は布告された。
その誓い、努忘れぬように呪いを贈ろう。痛みが胸にある限り、そは御身を溶かし続ける」

そう言われて、私は意識を失った。



******



目を覚ますと俺は暗闇の中に居た。真っ暗に近いが完全な暗闇ではない。そして、体を動かそうとして、全身の痛みに息が詰まった。あまりに痛みが強くうめき声が洩れてしまう。
何故こうなっているのかを考える。そうして思い出したのはラインハルトに砕かれたこと。じゃあ何で俺は生きている?
聖遺物を砕かれれば、身体にもダメージが及ぶはず。魂につけられた傷は、肉体にもフィードバックすはずだ。ならば完全にギロチンを砕かれた俺が、生きていられるはずはない。

「どうして……」

「ん、何がだい?」

「なッ!?…グゥ」

いきなり話しかけられ誰かが居たことに気付いた俺は思わず叫んでしまい、体中から痛みを感じた。

「落ち着きな。誰も取って食ったりはしないよ。まずは痛みを和らげたほうがいい」

取りあえずは言うとおりにして痛みを和らげるために落ち着くが同時に気が付く。拘束されてい
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