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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第五話 僕自身の渇望
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何時だったか、彼がマルグリットとの出会いを聞いてきたので答えたことがある。
『あなたに恋をした』
『あなたに跪かせていただきたい、花よ』
「へえ〜、君はそんな風に告白したんだ…恥かしく無い?」
無論、恥ずかしかった。よく分かっている。つまるところ、私は緊張していたんだ。あの娘に無視されたくない。取るに足らない一人として、流されることだけは避けたかった。だからあんな言葉が出たのだろう。
「でも、第一印象は最悪でしょ、それじゃあ?」
その通り、あの時だけは「しまった」と思ったものだ。今に至るも深くの出来事で、だからこそ判別できなかった。既知か未知かを。
「いやいや、その恋心だけは未知だったはずだろ。そうじゃなきゃ絶対そこまで君が動揺するはずが無いって。なんせ君は世界で一番嫌われ者なんだから」
それは些か酷くないかね?これでもこの恋は真剣なのだが。だからこそ君に話したのだが。
この甘苦い失敗談。彼女に共有して欲しいと思った、彼女への愛情についてを。
「君は馬鹿かね?いや馬鹿なんだろうね。きっと君のことが嫌いじゃない人を探してもきっと手の指の数で足りるよ。それにそういう惚気は本人の前でして来い。そうすれば彼女も喜ぶだろうよ」
果たしてそうかね?彼女はただ鬱陶しがるだけかもしてない。
「そのウジウジとした所が彼女が靡かない理由だろ。いっぺんその性格治して来い」
ハハハ、君にそう言われるとは、私も焼きが回ったものだ。
「おい一寸待て。どういう事だコラ!テメエ待ちやがれ!!」
また来るよ。でもたまには君のほうから来てくれると嬉しいのだがね。
「うるさい、馬鹿……うまくやれよ」
ああ、うまくやって見せるさ。何せ君がじきじきに助言をしてくれたのだからね。
******
「お初にお目にかかる、私のことはカールから聞いているかね」
私は気が付くと蓮の傍ではなくラインハルトと名乗った男性の腕に居た。
「卿のためにこの夜会を用意した。僭越ながら共に踊ってはいただけまいか」
この人は凡そ人が持つであろう美点を全て持っている。けれど私はそれに女として惹かれない。魂は痺れている。だけど、それは女として惹かれてるわけじゃないと断言できる。
では、一体何なのかと思いあたりを見回す。楽団の調べが聴こえる。ここは何処かのお城の大ホールで、何十人のオーケストラに囲まれ私達はその中心に居る。
「彼らは私の騎士で、同士だ。皆が卿を歓迎している。さあ、ともに一曲」
彼と共に夜会が始まった。
「カール・クラフトは私をなんと言っていたかね、マルグリット」
そうして気がついた、此処は歪なのだと。彼らはまるで喪に服している最中みたいにしている。
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