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『八神はやて』は舞い降りた
第6章  『八神はやて』
第50話 最終兵器はやて
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うと構わなかったが、父の悲しむ姿はみたくなかった。
 そして、難なく封時結界を張る。驚くべき彼女の魔法センスだった。


「これでいいでしょ? だから早く死ね」


 魔王サーゼクス・ルシファーに挑みかかった。激しい戦いが続く。敵の攻撃はこちらに通じないが、こちらの攻撃も敵に当たらない。だが、徐々に徐々に戦闘センスが磨かれていく。もう少しで、直撃できそうだ。
 そう、内心喜んだところで、一気にサーゼクスが勝負に出た。消滅の魔力がこちらに迫ってくるが、こちらも全力で応戦する。徐々に、こちらが押していく。


(やった、これで勝てる!)


 だが、ここに来て経験のなさが露呈した。まだ止めを刺す前なのにもかかわらず、肩の力を抜いてしまう。
 その隙を見計らったように、サーゼクスの力が急に何十倍にも増した。虚を突かれたハヤテは、完全にフリーズしてしまう。
 

「えっ?」


 放出していた力が押し返され、光に包まれる。全身を焼き尽くすような痛みの中、気力を振り絞って、抵抗する。



「そんな、ぼくは負けない、負けるわけない!」


 ―――だって、


「神様がぼくにこの力をくれたんだもん! おとうさんを助けるんだもん! だからッ」


 ――――負けるわけにはいかない!


 歯を食いしばって、耐える。なけなしの力を振り絞って、押し返そうとする。だが、現実は非常だった。身を守る青い光は、徐々に削られていく。


「いやだ、いやだよぉ! ぼくが負けたら、おとうさんが死んじゃう。もう会えなくなっちゃう! そんなの、いやだ。いやだよぉっ!!」


 スパークする視界の中、必死に叫ぶ。負けるわけにはいかないと、己を叱咤する。激痛に堪え、絶望的な状況でもあきらめない。彼女の願いはただ一つ。もう一度、あの幸せな日々に戻ること。
 けれども、たった9才の幼子が、どんなに健気に抗おうとしても。偶然手に入れた魔法の力に縋る様に願いを込めても。再び奇跡が起きることはなかった。


「うああああぁああ!!」


 徐々に崩壊していく身体。摩耗していく精神。流れる血も、流す涙も、とうに尽き果てた。既に、身体の感覚はなく、視界も閉ざされている。それでも、最後の最後まで、彼女は、諦めなかった。


「―――ッ!」


 ただ家族との日常が欲しかっただけの少女。だがしかし、身体のすべて、魂の一片まで、消滅の魔力に浸食されたことで、家族を案じる余裕はなくなっていく。


 ――――お前たちだけは、絶対に……絶対に許さない!!


 最期に、呪詛を残し、哀れな少女は、この世から消滅した。周囲に目撃者は皆無。彼女が生きた証を知るのは、相対したサーゼクスのみ――のはずだった
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