第七話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その1)
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
せば別な誰かが寵姫になるだろう。その女性が権勢を振るわないと誰が言える? つまり伯爵夫人は我等にとって理想の寵姫なのだ。夫人を守ろうとするのはそのためだ」
なるほど、姉上が権勢を振るわない事が姉上の身を守っている。他のどんな寵姫よりも姉上の方が皆には都合が良いということか。あるいは大公達にとってはベーネミュンデ侯爵夫人の復権は好ましい事ではないのかもしれない。そうか、幻の皇后か、それが有ったか……。
「幻の皇后ですか……。ベーネミュンデ侯爵夫人が復権すればブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家にとっても厄介な事になる。ベーネミュンデ侯爵夫人を敵とすることで私達は協力できる、そういうことですね」
俺の言葉にブラウンシュバイク大公とリッテンハイム侯は顔を見合わせ苦笑した。
「誤解があるようだが、我等は侯爵夫人の子を殺してはいない」
「その通りです、ミューゼル大将。義父やリッテンハイム侯が侯爵夫人の子を殺すことなど有り得ない……」
「では本当に死産だったと?」
「……いや、それは無い。殺されたのは間違いないな」
大公もリッテンハイム侯も殺していない、しかし侯爵夫人の生んだ子は殺された。そしてブラウンシュバイク公は大公の無実を信じている。どういうことだ?
「? では……」
「わしもリッテンハイム侯も無関係だ。あの件は別に真犯人が居る」
分からない、別に真犯人が居る? ならば何故その犯人を捕まえない? 自分達に濡れ衣を着せた犯人を何故放置する。有り得ない、何かがおかしい。それとも俺が何かを見落としているのか? 一体何を俺は見落としている。混乱する俺にヴァレンシュタイン、いやブラウンシュバイク公が話しかけてきた。
「殺す理由が無いのですよ。生まれてきた男子を殺すという事は皇位に野心が有るという事になります。しかしこの事件が起きた時は皇太子ルードヴィヒ殿下が御存命でした。いくら生まれてきた子を殺しても皇位には届きません。ましてブラウンシュバイク、リッテンハイム両家に生まれていたのは女児、しかもまだ幼い……」
「……」
「これでは皇太子ルードヴィヒ殿下の競争相手にもなりません。義父もリッテンハイム侯もこの状態で一つ間違えれば大逆罪にもなりかねない殺人を犯すはずは有り得ぬ事です」
なるほど、確かに理屈は合う。
「では、一体誰が……」
俺の問いに大公達は顔を見合わせた。大公とリッテンハイム侯が頷く、それを見てからブラウンシュバイク公が話し始めた。
「若い側室が男子を産んだ場合、一番困るのは年老いた本妻との間に生まれた後継者です。そうではありませんか?」
「!」
つまり、皇太子ルードヴィヒが犯人だと言うのか。驚く俺に公の言葉が続く。
「男子が生まれれば必ず側室と組んで殿下を排斥しようとする人
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ