第七話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その1)
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びながら入ってきたのはエリザベートだった。ほんの少し頬が上気している。頼むよ、俺を困らせないでくれ。
「どうしたのかな?」
できるだけ穏やかに話しかけるとエリザベートは俺に近付きながら手に持っていた手紙を差し出した。
「?」
「エーリッヒ様にこれが届いてました」
エリザベートから手紙を受け取り開封する。一読して何が起きたか、起ころうとしているのかが分かった。やれやれだな、これが俺に来るか……。
「エリザベート、義父上は今何処に?」
「居間ですわ。お父様への手紙でしたの」
「いや、多分私だと思う。しかし義父上にもお見せしたほうが良いだろう」
■ 帝国暦486年7月23日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 ラインハルト・フォン・ミューゼル
ヴァレンシュタイン、いやブラウンシュバイク公より至急屋敷に来て欲しいと連絡が来た。これまでパーティなどで何度かこの屋敷に来た事はあるが、あくまで大勢の参加客の中の一人としてだった。今回のように当主から一人呼ばれるなどという事は無かった。
例の件については未だ回答をしていない。皇帝は凡庸ではなかった。キルヒアイスにも皇帝との会談の全てを話したが彼も驚き困惑していた。多分ブラウンシュバイク公に協力するのが正しいのだろう。
しかしこれまで皇帝になる事を目指してきたのだ。それを捨てられるだろうか……。しかし失敗すれば姉上にまで累は及ぶ。そして今の状況では俺が皇帝になるのはかなり難しい……。問題は次のブラウンシュバイク公の出兵だろう。どのような結果になるか、それ次第ではまだまだ分からない。
応接室に通されると其処にはブラウンシュバイク公と大公、そしてリッテンハイム侯が居た。ブラウンシュバイク公はにこやかに微笑みながらソファーから立ち上がり俺を迎え入れた。
「ミューゼル大将、忙しいところをお呼びだてしてすみません」
「いえ、お気になさらず」
「こちらへ、どうぞ」
「はっ、失礼します」
どうもやりづらい……。
ソファーに座り三人と対峙する。妙な感じだ、この四人がこんな感じで対するとは……。そう思っていると大公が話しかけてきた。
「ミューゼル大将、良く来てくれた。少々面倒な事が起きてな、卿にも関わりの有ることだ」
「面倒な事? 私に関わりがあることで?」
俺の問いかけに大公は重々しく頷いた。そしてヴァレンシュタイン、いやブラウンシュバイク公を見る。俺も釣られて公を見ると公は黙って封筒を差し出してきた。
封筒を受け取る、封はもう切られている。既に目の前の三人は見ているという事か、そして俺に関係があると判断した。しかし一体なんだ? 中の書簡にはごく短い文章が書かれていた。
“宮中のG夫人に対しB夫人が害意をいだくなり。心せられよ”
姉
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