第三十話 論戦に向けて一
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第三十話 論戦に向けて
マイラは聖書それに旧教の経典は読んでいた、だが。
新教のものには手も触れようとしない、オズワルド公と司教はそのことを見てマイラに怪訝な顔で諫言を行った。
「出来れば新教の書もです」
「読まれるべきです」
「相手のことも知り」
「そしてそのうえで」
「異端の書です」
マイラは二人に眉を曇らせて言った。
「ですから」
「それは、ですか」
「されませんか」
「新教の書を読まれることは」
「そのことは」
「卿等が読むことは止めません」
それはというのだ。
「しかしです」
「それでもですか」
「マイラ様ご自身はですか」
「読まれませんか」
「そうなのですか」
「はい」
頑な返事であった。
「私は」
「左様ですか」
二人共だ、主のその頑な言葉を聞いてそれ以上は言えなかった。それでこう言うしかなかった。
「では旧教の書をです」
「さらに持ってきますので」
「学ばれて下さい」
「その様に」
「していきます、正しい教えを熟知していれば」
それでというのだった。
「異端の教えなぞものではありません」
「しかしですね」
ここでオズワルド公がマイラに確認する為に問うた。
「決して。新教徒達は」
「この国にいる彼等はですね」
「異端審問にかけるといったことは」
「あの方が許されていません」
彼女の夫である太子がというのだ。
「それではです」
「そうですか」
「はい、それはです」
決してというのだった。
「私もしません」
「それならば」
「このことは約束します」
マイラは言い切った、マイラは約束を破りはしない。生真面目な気質故にそうしたことは絶対にしないのだ。
「新教徒達は好きにさせます」
「そうされますか」
「はい、しかしです」
「我々の優位はですね」
「戻します」
かつての様にというのだ。
「そしてそのうえで」
「彼等を認めるのですね」
「そうです、異端ですが彼等の利は大きいです」
国にもたらすそれはというのだ。
「ですから」80
「彼等の信仰は許す」
「それは、ですね」
「異端として処罰するのではなく」
「その様に」
「太子のお考えですのでえ」
それ故にというのだ。
「そうしていきます」
「それがいいかと」
司教はマイラの言葉を聞いて確かな声で応えた。
「やはり」
「そうですね」
「はい、彼等は商工業者が多いです」
「だからですね」
「そうです、彼等がいなくては」
「国が成り立たない」
「有力な諸侯に新教徒達も多いですから」
このこともあってというのだ。
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