閑話―覇道―
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い。その民衆を巻き込み敗走に見せかけるのはまだ理解出来る。民が被った被害は金銭や物品で保証できるはずだ。しかし命は違う。
ただ生を謳歌したいだけの彼らを、逃げ往く家族を守るという名目で矢面に立たせ利用する。
とてもではないが許可を出せるような策ではない。
しかし――
「……」
郭嘉は静かに華琳を見つめる。その瞳は何かを量っているようだ。
それもそのはず、郭嘉が知りたいのは策の成否ではない、主の覇道に対する覚悟だ。
「……彼らを利用せずには勝てないというのね?」
「元々が詰んでいる盤面、尋常ならざる策を用いなければ勝機はありません」
華琳は目を閉じる、思い浮かべるは郭嘉の策を拒否した戦場。
白馬一帯と投石機で序盤は優位に進められる。しかし、討てど討てども陽軍の脅威が揺るがない。
ついには大河を越えて攻めてくる、別働隊を派遣して官渡側にまで回り込んできた。
魏軍の防衛線が瓦解、白馬での篭城戦に移行した。陽軍は魏軍を完全に包囲。
魏軍は善戦するも、砦内に突入した大炎の前に敗北した――。
場面が切り替わる。陽国の首都南皮で袁紹と華琳が謁見していた。
『陽軍として、我が国の将として、華琳の夢を叶えようではないか!』
彼は手を差し伸ばす、華琳はそれを手に取った。
また場面がが切り替わる。どこかの戦場だ。御輿の上で高笑いする彼の横で、少し不機嫌そうに華琳が指示を出している。良く見ると近くには白蓮も居た、どこか同情するような目で此方を見ている。
それが何となく気に入らず、彼女をからかう。白蓮は真面目に反応し返す。
程なくして敵軍が降伏する。当然だ。私達に敵う相手などいるわけがない。
戦勝処理を有能な者達にまかせて夜は――
そこまで想像して華琳は目を開く。在りえた未来、悪くないと思う自分がいた。
それが気に入らない。
彼女の名は曹孟徳、大陸に覇を成すべく生まれた唯一無二の存在。
今までに培った軌跡、歩んできた道、賛同し付いて来てくれた家臣達。
華琳の目指す覇道は――一人の男に揺らぐほど軽くは無いのだ。
大体彼の下に付く事が気に入らない。私は覇者だ、必ずやこの戦に勝ち、“全てを”手にする。
水を打ったような静寂の中、意を決して口を開いた――
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