第三章
[8]前話 [2]次話
顔は薄化粧をしていて眉は細く髪の毛は高く結い上げている。横笛を吹きつつ現れた見事な稚児だった。
その稚児を見てだ、僧兵は彼に声をかけた。
「子供か、よい」
「勝負はしないというのか」
「左様、拙僧は女子供は相手にせぬ」
だからだというのだ。
「太刀を持っていてもな」
「それはおかしなこと、私は確かにま稚児の歳だが」
「それでもというのか」
「この通り太刀を持っている。ならばな」
「武芸もか」
「心得はある」
「よいのか、それならだ」
「相手をしてくれるか」
「貴殿がそう言われるなら」
僧兵は金棒を両手に持って構えた。
「是非共」
「では」
「今宵で願掛けとなるか」
「願掛けか」
「その話は勝負の後でしよう」
「聞かせてもらおう」
「貴殿の太刀を貰った後で」
僧兵は稚児に言った、そして。
僧兵は稚児に向かって金棒を左から右に振った、力を利用した速いものだった。だがその金棒の一撃をだ。
稚児は上に飛んでかわした、そこから橋の上に降り立った。僧兵はそこにも金棒を振るうが稚児はそれも飛んでかわし。
左に移った、僧兵はまた金棒を振るうが右に左にだった。
稚児はかわす、僧兵の攻撃は。
次々に出されるがだ、稚児は素早く蝶が夜空に舞う様にかわし。
遂にだ、隙を見てだった。
僧兵の頭を持っていた横笛で打った、頭を打たれた僧兵はここで言った。
「参りました」
「負けを認めるか」
「頭を打たれたからには」
それにはというのだ。
「認めるしかありませぬ」
「そうか、では聞かせてもらおうか」
「願掛けのことを」
「都に入りすぐに聞いた、御主はここで武芸者を倒してその武器を奪っているな」
「千集めた時に願掛けをするつもりでした」
僧兵は稚児にこのことを話した。自分の前に降り立った彼に対して。
「そしてそれまであと一つでしたが」
「どうした願掛けか」
「本朝一の武勇を授けてくれる様に」
「左様であったか」
「はい、しかし今宵貴殿に負けましたので」
「その願掛けはか」
「出来なくなりました」
僧兵は稚児に項垂れて話した。
「また一からです」
「そうか、本朝一というがな」
「それでもですか」
「その武芸を何に使うつもりだったか」
「そこまでは」
「考えていなかったか」
「実は」
「御主は今で充分強い」
稚児は僧兵のこのことを言った。
「私はこの技は鞍馬山で教わったがな」
「あの山は確か」
「うむ、天狗達がおってな」
「その天狗達から教わったものですか」
「左様、その武芸をそなたも教わりたいか」
「是非」
「そもそも本朝一といってもな」
それでもとだ、稚児は僧兵に話した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ