第四章
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「来てくれるのよね」
「家に帰ったらな」
「それがね」
郁美は笑ってさらに言った。
「嬉しいのよ」
「ああ、本当にな」
「それでお家の中ではいつも一緒にいてくれて」
「そのこともな」
林蔵もライゾウを見つつ話す。
「嬉しいな」
「いないと寂しいでしょうね」
「こんな奴でもな」
「結局あれなのよ」
郁美はこんなこともだ、夫に言った。
「ライゾウは邪気がないのよ」
「悪いことばかりしていてもな」
「悪気はないのよ」
悪戯はしてもというのだ。
「結局は」
「だからいいんだな」
「そう、可愛いのよ」
「外見だけの問題じゃなくて」
毛並みはよく顔立ちも整っている、美形と言っていい猫だ。
「性格もな」
「そうよね」
「人懐っこくて家族が好きで」
「だから私達もこの子好きなのよ」
「そうだな、お客さんが来てもお客さんの方に行って」
そしてなのだ。
「挨拶するみたいに身体摺り寄せるしな」
「あれは匂い付けらしいけれど」
猫の習性の一つだ、一見すると親愛を表す仕草だが実は只匂いを付けているだけなのである。これを知る者は猫好きでも少ないだろうか。
「あの仕草もね」
「お客さんから評判いいし」
「子供達や孫達にもね」
時々家に来る彼等もというのだ。
「清なんか特にね」
「あいつは一番ライゾウが好きだな」
「そうよね」
「だからここに来たらいつもな」
「遊んでるわね」
「噛まれたり引っ掻かれたりしながらも」
それでもなのだ、清は。
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