第五章
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「そうしてね」
「どうしても?」
「そう、どうしてもよ」
「今日はもういいから休むんだ」
ここでまた夫が言う。
「いいな」
「お父さんの言う通りよ、そうしてね」
「そこまで言うのなら」
恵美も頷いた、そしてだった。
恵美はこの日は早いうちから寝て次の日は仕事を休み家事も家族特に娘に任せて自分のベッドの中でこんこんと寝た、そうして身体を休めた。
その後でだ、奈央はクラスメイト達にこのことを話したのだった。
「とまあそういうことでね」
「お母さんがお料理を失敗してなの」
「とんでもない味だったのね」
「風邪をひいたせいで」
「そうなったのね」
「そうなのよ、まさかね」
奈央はクラスメイト達にしみじみとした口調になって言うのだった。
「お母さんが過ちを犯したって言って」
「びっくりしていたらお料理のミスで」
「しかもそれが凄くまずくて」
「原因は風邪だった」
「そうだったっていうのね」
「そう、何ていうかね」
それこそと言うのだった。
「驚いたわ」
「過ちっていうとね」
「普通は浮気とかって思うからね」
「ヤミ金とか」
「家庭崩壊コースって思うわね」
「私もそうだったわ、けれどね」
それがというのだ。
「いや、そういうのだったのよ」
「只の調理ミス」
「それも風邪のせいでのね」
「大したことなかったわね」
「別にね」
「ええ、ただお母さんも失敗するのね」
真実をわかってからだ、奈央はこうしたことを言ったのだった。
「完璧だって思っていたら」
「まあ人間だからね」
「完璧な人っていないからね」
「奈央のお母さんも人間だし」
「そうしたこともあるわよ」
「そうね、そのことがよくわかったわ」
今回の件でというのだ。
「けれどその失敗がかえってね」
「いいっていうの?」
「そうだっていうの?」
「だって完璧だったら何かね」
幾らその相手が憧れている母でもというのだ。
「怖いからね」
「機械じゃないからね」
「あまりにも完璧過ぎたらね」
「愛嬌も感じられないし」
「かえってあれよね」
「そう、だからね」
それでと言うのだった。
「何処かほっとしてるのも事実だし、お母さんにもそうした意味でかえって親しみも持てたし」
「よかったっていうのね」
「結果としてそう思ってるのね」
「ええ、やっぱり私お母さん大好きよ」
奈央は微笑みクラスメイトに答えた。
「これからもね」
「お母さんみたいになりたい」
「そう言うのね」
「だから言ってるのよ」
今実際にとだ、奈央はクラスメイト達にまた答えた、その答えは明るく邪気のない笑みで出されたものだった。
母の罪 完
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