第三章
[8]前話 [2]次話
「あいつが直接やったという証拠ではないからね」
「私が調べただけで」
「そう、完全な証拠ではないよ」
「ですが調べたら」
「言い繕いは何でも出来るさ」
シニカルな笑みのままでだ、キャメロンはメイに答えた。
「悪人はそうするし特にああしたタイプの悪人はね」
「そうしますか」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだった。
「証拠がないと言って会社に居座るよ」
「学生時代もそうしていましたか」
「自分は部活をさぼっても相手には部活に行けという奴だよ」
そうしたこともしていたというのだ、ジョンソンは。
「面の皮の厚さも異常でね」
「では」
「君がこの証拠を出して私が受け取る」
「刑事事件になってもですか」
「完全な証拠でないならだ」
「裁判でもですか」
「無罪になる可能性はある、いや」
キャメロンはメイにさらに言った。
「むしろね」
「無罪になる可能性が高い」
「君のそれが偽造だと言ってあいつが腕利きの弁護士を雇えばね」
「そして弁護士さんが陪審員の人達に訴えれば」
「何とでもなるものだよ、裁判はね」
「そうしたものですか」
「何しろ完全な証拠ではないからね」
メイが調べたうえだけでのことでしかないからだというのだ。
「もっともよく君も調べたね」
「私は会社の事務でして」
「そのうえで出席や会計をチェックしていてか」
「妙に感じて調べました、すると」
「あいつに関わることでそうなっていた」
「それでなのですが」
「そうだね、それでもね」
さらに言うキャメロンだった。
「君が調べただけでね」
「まだ不十分ですか」
「あいつがやったことの一部を朧ろでしかないだろう、朧ろ即ち幽霊だね」
幽霊が透けていることからの言葉だ。
「幽霊は証拠になるかい?」
「いえ」
「そういうことだよ、残念だがね」
「これを出してもですか」
「そう、あいつは有罪に出来ない」
「そうですか」
「しかし」
ここでだ、キャメロンはニヤリとした笑みになった。そのうえでメイにこうも言ったのだった。
「あいつが終わる時が来た」
「終わり、ですか」
「しかも最悪の、あいつを知る人間全員にとっては最高の結末がはじまるね」
「有罪にはならないですが」
「いやいや、君はまだ若い」
メイその楚々とした顔立ちを見て言う。
「その若い君が気付いたんだ」
「だからですか」
「じゃあ他の人達もだよ」
まさにというのだ。
「気付かない筈がないからね」
「会社の中で、ですか」
「幾らあいつが悪事を隠していてそれで平気な奴でもだよ」
「それでもですか」
「あいつはもう終わりだ」
「仰る意味がわかりませんが」
メイはキャメロンの言葉に首を傾げさせて返した。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ