第六話 ブラウンシュバイク公
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ような笑顔を見せている。父がそんな表情をするなんて珍しいことだ。
「ですが、今日こうして招待していただけた事は感謝しています」
「そう思ってくれるか」
「はい」
父は中将をじっと見ていたが一つ頷いた。中将も父を見ている。そして私を見て柔らかな微笑みを浮かべた。
■帝国暦486年7月12日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク
お茶の時間が終わるとヴァレンシュタインは仕事に戻らなければならないと言って屋敷を辞去しようとした。悪いお茶会ではなかった、和やかで穏やかな時間だった。皆寛いで話をしていたと思う。ヴァレンシュタインが帰ると言った時には名残惜しいと思ったほどだ。
別れの挨拶をした後、ヴァレンシュタインはわしだけに分かるように“二人で話したい”と言ってきた。妻と娘に“少し中将に話がある”と言って場を外してもらった。
「ブラウンシュバイク公、フロイラインは未だ何も知らないのですね?」
「うむ、先入観無しで卿に見てもらいたかったのでな。娘をどう思った?」
「悪い方では無いと思います」
ひとまずほっとした。まあお茶会の雰囲気から悪い印象は持たなかったと思ったが……。
「上手くやっていけるかな?」
「そうしたいと思います」
「うむ、娘を頼む」
ヴァレンシュタインが頷いた。大丈夫だ、信頼して良いだろう。
「これからフロイラインに伝えるのですか?」
「そうだ」
「では大変ですね」
皮肉かと思ったがそうではなかった。ヴァレンシュタインは生真面目な表情でこちらを見ている。
「なに、あれは卿の事が気に入ったようだ。心配はいらん」
わしがそう言うとヴァレンシュタインは僅かに苦笑した。
「これから宜しく御願いします」
「こちらこそよろしく頼む」
「公爵夫人にも宜しくお伝えください」
「分かった」
ヴァレンシュタインが去った。さてこれから娘に話さなければならん。確かに心配はいらんが大変ではあるようだ。やれやれだな、いっそ妻に頼むか? こういうのは父親よりも母親の方が向いているかもしれん。
■ 帝国暦486年7月13日 オーディン 新無憂宮 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
典礼省から俺とブラウンシュバイク公爵家の養子縁組の許可が下りた。その際、俺がリメス男爵家の血を引く男子である事も合わせて典礼省にある家系図に登録された。リメス男爵家は領地も爵位も返上しているから登録されても俺には何も無い。
但しそれを請求すれば別だ。俺は今リメス男爵家の唯一の男子で爵位と領地を請求すれば許されるだろうという事らしい。典礼省の役人が恩着せがましく言いやがった。馬鹿馬鹿しい、そんな物要るか!
それにしても年寄りどもは仕事が速い。老
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