第三章
[8]前話 [2]次話
「このことは」
「わかりません」
「考えてみれば妙な話です」
「何故男子校の我が校で同性愛についての校則が一切ないのか」
「不思議ですね」
「何故でしょうか」
「それはわからない」
稲葉は首を傾げさせた、そのうえでこの校則について生徒達の間での議論を提唱した。無論校則として不純同性交遊を禁止するかどうかを定める為だ。
だがこの議論はだ、盛り上がらなかった。
「いや、俺女の子が好きだし」
「俺もだよ」
「同性愛なんて興味ないし」
「それに妊娠とかの話もないだろ」
「妊娠とか結婚なら事だけれどな」
「それがないならいいんじゃね?」
生徒達は口々に言う。
「ダチがホモなら引くけれどな」
「別に法律で禁止されてないだろ」
「だったら別にいいんじゃね?」
「当人達で好きにやればいいだろ」
「性犯罪にならない限りな」
「別にいいんじゃね?」
「少数派だしな」
校内に同性愛者がいなくてもだ。
「別にな」
「それじゃあいいだろ」
「そうだよな」
「そんなことしなくてもな」
「校則にまでしなくても」
「特にいいだろ」
殆どの者がこう言っていてだ、生徒会もだ。
「不純異性交遊は他校の女子生徒とのこともありますし」
「やはり校則であってもいいですが」
「間違いも起こりやすいですし」
「ですが」
それでもというのだ。
「不純同性交遊は」
「そもそも滅多にいませんし」
同性愛者自体がというのだ。
「妊娠だの結婚だの」
「そんな話もないですし」
「別にいいのでは?」
「校則に定めなくても」
「それでも」
「これまで存在しなくても問題になりませんでした」
「それなら」
生徒会の面々もこう言っていた、消極的であることは明らかだった。そしてそれは生徒会長である稲葉も同じでだ。
やはり積極さがない顔でだ、生徒会の面々に言った。
「ではいいか」
「はい、そうですね」
「それならですね」
「別にですね」
「構わないですね」
「それならな」
こう言うのだった、それでだ。
結局不純同性交遊は校則として禁止されなかった、校則として存在しなかったがこれからも特に禁止されることはなかった。
この話は学校の理事会にも伝わった、理事長の岡田明信はそのひょっとこに似た丸い目と尖った口の顔で言った。
「またか」
「十年位前にもですね」
「こうした話がありましたね」
「同性愛を校則でどうするか」
「そうした話が」
「そうだったな、その時私は理事長でなかったが」
理事長の席で言うのだった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ