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泥棒
第二章

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「見張りを立ててな」
「そのうえで」
「対しますか」
「そうしよう」
 新井は幕臣達に言ってだった、見張りを立てた。すると。
 駿府においてだ、何とだった。
 見張りの者達が見てだ、呆れて言った。
「何と!」
「これはいかん!」
「すぐに止めよ!」
 彼等は武士としてだ、慌ててだった。
 聘礼使達と民達の間に入った、何と彼等は喧嘩をはじめたのだ。しかも武士達はその喧嘩がはじまる時も見ていた。
 そのことでも驚いてだ、何とだ。
 聘礼使達と駿府の民達が殴り合い、棒まで出して尚且つ子供が血を出して倒れたりしたので余計に驚いて間に入った、あちらの者達の言葉を通詞から聞き。
 民達の言い分を聞いてだ、彼等は余計に呆れた。それでだった。
 急いで江戸に戻り新井に話すとだ、新井もだ。
 その話を聞いてだ、驚いて言った。
「あの者達の話はわしも聞いておった」
「左様ですか」
「そうでしたか」
「うむ、あちこちで唾を吐き階段で小便をしたりとな」
「汚いですな」
「それはまた」
「しかも下の者には何をしてもじゃ」
 それこそというのだ。
「平気だとな、しかしな」
「この話を聞かれてですか」
「ご老中も」
「呆れたわ」
 こう言うのだった。
「まことにな」
「はい、まさかです」
「民達の鶏を奪い取るなぞ」
「こんなことは大名行列ではありませぬ」
「想像すら出来ませぬ」
 報告する者達は驚きを隠せないまま新井に話す。
「確かに大名行列もたまに狼藉がありますが」
「しかしです」
「民からものを奪うなぞ」
「その様な恥晒しなことはです」
「武士ならば出来ませぬ」
「切腹では済みませぬ」
「わしもそう思う、それで喧嘩を止めたな」
 新井は彼等に問うた。
「そうしたな」
「はい、あまりにも酷かったので」
「そうしました」
「放ってもおけず」
「間に入って止めました」
「よいことじゃ、どうやら空き巣もな」
 対馬から東に東に向かっていたそれもだ。
「間違いないな」
「ですな、どう考えましても」
「盗みの場所と時期があの者達の通っている場所と同じです」
「それではです」
「最早」
「他の者は考えられぬ」
 新井は言い切った。
「到底な」
「ですな、しかし」
「行く先々で空き巣ですか」
「これもまたです」
「到底」
「わしも同じじゃ、大名行列ではな」
 新井も頷いて応えた、苦い顔で。
「そんなことをすればお撮り潰しどころかじゃ」
「末代までの恥です」
「武士のやることではありませぬ」
「あの鶏泥棒といい」
「到底」
「常々問題を起こしておったしのう」
 彼等はというのだ。
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