第六章
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「そうするか?」
「そうだな、俺は旦那に悪い印象ないしな」
「俺もだ、じゃあな」
「一緒に行くか」
「そうしような」
こう話してだ、二人でカポネの墓参りに行くことにした、彼が君臨していたそのシカゴから彼の墓まで向かった。
そしてだ、カポネの墓の前でだった。二人はここに来るまでに新聞やラジオで知ったカポネのことを話した。
「旦那梅毒だったんだな」
「ああ、みたいだな」
「それで神経とか頭やられてか」
「ああなってたんだな」
「それでわかったよ、俺も」
やるせない感じの顔でだ、ドックはコズイレフに言った。
「旦那がどうして刑務所で大人しかったか」
「梅毒にやられてたんだな」
「それでもう人が変わってたんだな」
「そうだったんだな」
コズイレフもドックに彼と同じ表情で返した。
「暗黒街の帝王も梅毒にはか」
「勝てなかったんだな」
「そうみたいだな」
「アルカトラズでもな」
彼が送られたその刑務所でもだ。
「かなりいじめられたりしていたらしいな」
「あそこでもか」
「ストに参加しなくて刺されたり罵られてベッドの中で泣いたりな」
マフィアのドンだった頃からは想像出来ないがだ。
「そんなのだったってな」
「ラジオで言ってたな」
「大変だったみたいだな」
「それでどうしようもなくなってか」
「入院までしてボロボロの状況で出て」
「死んだんだな」
「何かな」
二人でだ、カポネの墓を見てだった。
遠い目になりだ、そのうえでだった。
二人はそれぞれが持って来ていた花束をカポネの墓に捧げた。そのうえでまた二人で話をしたのだった。
「俺達にとって旦那は悪い人じゃなかった」
「静かで大人しい人だった」
「どうしてもドンだったなんてな」
「思えなかったさ」
「だから言うな」
「そこで安らかにな」
眠ってくれというのだ。
「そうしてくれよ」
「そこでな」
「そして最後の時にな」
「また会おうな」
こう言ってだ、そのうえで。
コズイレフはドックにだ、顔を向けて言った。
「じゃあな」
「ああ、今からな」
コズイレフもドックの言葉に頷いて応えた。
「旦那にな」
「贈りものをしような」
二人で話をしてだった、そのうえで。
それぞれの花束をカポネの墓に捧げた、そのうえで彼に言った。
「旦那、安らかにな」
「そこで眠っていてくれよ」
「俺達はあんたを嫌いじゃなかったぜ」
「大人しい静かな人だったよ」
彼等が見たカポネも語った、最後に花束の間にだ。
彼がよく飲んだという酒のボトルを置いて去った、二人はそのうえでシカゴに戻った。彼が過去にいて今は彼等がいる街に。
弔花 完
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