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弔花
第四章

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「俺がカポネだ」
「そうだよな」
「何か用か」
「いや、この前ここに入って来てな」
「そうか」
「ああ、挨拶に来たんだよ」
「成程な」
 どうにも素っ気ない返事だった、表情にも覇気がない。
「宜しくな」
「ああ、じゃあな」
 ドックは愛想笑いを浮かべたがカポネはそれに反応を見せなかった、これが彼とカポネのやり取りだった。
 そしてその後の彼を見るとだった、やはり。
 普通の囚人達よりも大人しかった、それにだった。
 彼を罵倒する者もおり弱い立場の囚人だった、その様子を見てドックはあらためてコズイレフに言った。昼食の時に。
「あれじゃあマフィアのドンとかな」
「言われてもだな」
「信じられないな、何処か悪いのか?」
「さあな、それこそ酒に女にな」
 マフィアのドンともなればとだ、コズイレフは固いパンをかじりつつ話した。
「思いのままだったろうしな」
「それで身体壊したか」
「それでか?」
「ああして大人しくなったのかもな」
「そうなのか」
「かもな、まあとにかくな」
「あれがドンか」
 ドックは今食堂にカポネがいないことを確認してから言った。
「今の」
「そうだ、暗黒街の帝王だ」
「外にいる時は違っただろうな」
「全然な」
「それがか」
「最初来た時は違ったらしいがな」
「今じゃああか」
「ああ、ただどうもここにいるのはな」 
 アトランタ刑務所にだ。
「あと少しらしいな」
「そうなのか?」
「アルカトラズにな」
 ここでコズイレフは小倉になった。
「送られるらしいな」
「おいおい、あそこか」
「ああ、あそこだよ」 
 孤島にある、アメリカで凶悪犯ばかり送られる刑務所だ。そこは他の刑務所とは全く違うと言われている。
「送られるらしいな」
「あそこは」
 アルカトラズのことはドックも知っている、だからすぐにコズイレフに言った。
「それこそどうしようもない凶悪犯が入る」
「特別な刑務所だな」
「こことは全然違うだろ」
「あそこと比べたらここは天国らしいな」
「あの旦那はもうな」
 ドックは彼自身が見たカポネのことを話した。
「そんなことは」
「それは御前さんが思うことでな」
「刑務所の方は違うっていうのか」
「司法省とかはな」
「それでか」
「少なくともあの旦那のやってきたことはそれだけのものだろ」
「それはな」
 そう言われるとだ、ドックも頷くしかなかった。カポネがマフィアのドンとしてやってきたとされていることを思い出すとだ。
「そうだけれどな」
「それじゃあな」
「あの旦那はアルカトラズに送られてもか」
「仕方ないさ」
「そうなるか」
「俺達とはやってきたことが違う」
 それこそというのだ。
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