第三章
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「いるけれどな、それも結構」
「じゃあ」
「いや、その連中は味方をしてもな」
「カポネが命令を出すことはか」
「ないんだよ」
これがというのだ。
「だからな」
「安心していいのか」
「ああ、そうなんだよ」
実際にというのだ。
「これがな」
「信じられないな」
ドックはここまで聞いてだ、実際にそうした顔になって言った。
「まさか」
「俺も最初信じられなかったがな」
「本当にか」
「ああ、そうなんだよ」
この刑務所の中にいるカポネはというのだ。
「まあそこはな」
「自分の目でか」
「確かめてみればいいさ」
「わかった、じゃあな」
コズイレフの言葉に頷いてだった、ドックはカポネを見ることにした。カポネを見ることは案外すぐにそれに楽だった。
彼は靴を作っていた、確かに太っていて大柄で眉の太い弾丸型の頭の男だった。イタリア系独特の彫りのある顔立ちで髪の毛は上の部分がかなり後ろまでなくなっている。
彼は黙々と仕事をしている、まるで模範囚の様に。
その彼を実際に見てだ、ドックは共に働いているコズイレフに囁いた。
「あの人が、だよな」
「ああ、アル=カポネだよ」
実際にとだ、コズイレフも答えた。
「あの人がな」
「何かな」
「全然だよな」
「イメージと違うな」
「もっとあれだろ」
「仕事なんかしなくてな」
刑務所の中でもだ。
「王様みたいに暮らしてるって思ってたさ」
「取り巻きに囲まれてだな」
「そうしたのって思っていたが」
「俺の言った通りだろ」
「ああ、実際にな」
「けれど間違いなくな」
「アル=カポネか」
「そうさ」
見れば周りの囚人達の中には時々彼を馬鹿にした顔で見て横や後ろを通り過ぎたりしている。だがカポネは何も言わないし睨み返したりもしない。
そんな彼を見ていてだ、ドックはついついだ。
コズイレフにだ、こう囁いた。
「声かけてもいいか?」
「カポネにか」
「ああ、そうしてもな」
「いいか?」
「別に何もされないさ」
それこそというのだ。
「だから安心しろ」
「ならな」
「ああ、ただな」
「反応はか」
「ドンじゃないからな」
マフィアのそれではというのだ。
「別に」
「じゃあそのことを頭に入れてな」
「声かけてみろよ」
「それじゃあな」
こうしてだった、ドックは実際にだった。カポネの方に行って。
こうだ、カポネに声をかけた。
「アル=カポネさんかい?」
「そうだが」
カポネはドックの方をちらりと見てから答えた。
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