第三章
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「畳の上ですれないし抜けたりしないし」
「それでか、ただな」
「ただ?」
「あんた髪の毛の量多いよ」
大助のその頭を指差してだ、親父は看破する様にして言い切った。
「安心していいよ」
「そうですか?」
「ああ、多いよ」
実際にというのだ。
「あんたの髪の毛はな」
「皆からハゲって言われますが」
「そりゃそんなに短いとだよ」
五厘刈りに限りなく近いスポーツ刈りならばというのだ。
「そう言われるさ」
「そうなんですか」
「というかあんたどれ位の頻度で三発に行ってるんだ」
「三週間に一回ですね」
それ位でとだ、大助は親父に正直に答えた。
「行ってます」
「じゃあ殆ど伸びないうちに刈ってもらってるんだな」
「そうですね」
「それじゃあだよ」
余計にとだ、親父は言うのだった。
「そう言われるさ、一センチでも伸ばしてみろ」
「髪の毛を」
「あんた絶対にハゲって言われないからな」
「本当ですか?」
「ちょっと散髪屋に行くのを止めるんだ」
三週間に一度どころかというのだ。
「そうしたらわかるからな」
「だといいですが」
「だといいですかじゃない、とにかくうちではな」
「そうしたお薬はですか」
「売れん、その状況で薬を飲んだら」
漢方医学の育毛剤、それをだ。
「あんた雪男になるぞ」
「雪男ですか」
「全身毛だらけでな」
「そうなりますか」
「そうなりたいならやるが」
その育毛剤をというのだ。
「どうだ」
「いや、そこまでは」
そう言われるとだ、大助もだった。
流石にその気はなくてだ、親父にこう答えた。
「いいです」
「そうだな」
「じゃあ試しに髪の毛伸ばしてみます」
「一センチでいいからな」
「それ位だとすぐですね」
「ああ、試しにやってみろ」
「それじゃあ」
こう親父と話してだった、彼は実際にだった。
散髪屋に行くのを止めてみた、そして親父の言う通り髪の毛を一センチばかり伸ばしてみるとだった。会社の同僚達からこう言われた。
「髪の毛増えたか?」
「また急に増えたわね」
「ハゲてないぞ」
「かなりの量じゃない」
「いや、実は漢方薬のお店で親父さんに言われたんだ」
大助は彼等にも正直に話した。
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