火竜と猿と牛
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った表情のまま起き上がったバルカンが頭上に手を伸ばした。パキ、と小さな音がして、垂れ下がった氷柱が折れる。
「ウホホッ!!!」
「火にはそんなモン効かーん!!!」
氷柱を折っては投げてまた折ってを目にも止まらぬ速さで繰り返すバルカンだが、ナツには全く効いていない。腕を大きく広げるナツから発せられる熱で、ナツに近づくだけで全て解けていってしまう。
これでは勝てないと気づいたのだろう。氷柱を折るのを止めたバルカンは、ふと近くにあったそれを手に取った。
「ウホ」
「それは痛そうだ」
「タウロスの斧!!!」
ルーシィが叫ぶ。バルカンが両手で握ったそれは、先程ナツの蹴りで呆気なく伸びてしまったタウロスの武器だった。
慌てて目を向けると、まだタウロスは伸びている。彼が倒れたと同時に星霊界に帰っていれば斧もここから消えるのだが、タウロスがここにいるのなら彼の持ち物である斧もここにある。更に、ルーシィではタウロスを強制的に星霊界に帰す事が出来ない。今すぐにタウロスが意識を取り戻し、自分から帰らなければ、あの斧は消えないのだ。
「キェエエエエッ!!!!」
「わっ」
奇声と共に大きく振るわれた一撃をしゃがんで避ける。
大振りな攻撃を、打てば当たると言わんばかりに振り回す。隙が多く避けやすいが、当たれば一溜まりもない。時に逆立ちのように腕の力で体を支え、時にギリギリで身を横にずらしたりして何とか避けるが、ここでもナツは一つ、大事な事を忘れていた。
「うおっ、危……なっ」
軽やかに跳んで避け着地……しようとして、足が滑る。軸にした右足がつるんと凍った地面の上を滑り、派手な音を立ててその場に倒れ込む。
「ウホォ―――――!!!」
その大きな隙を見逃すはずもなく、バルカンが大きく斧を振りかぶる。まず外れる事のない距離に不利な体勢が重なり、更にタウロスはまだ気絶していて、防御の術もないナツの体が真っ二つ――――
《あらよっと!!》
―――には、ならなかった。
気の抜けた声がしたとほぼ同時に、ナツと斧の間に煌めきが走る。淡い紫の光はそのまま広がって障壁を作り出し、振り下ろされた斧を難なく受け止めた。
「ウホッ!!?」
「気を緩めるなよ、ナツ。ついでに屈め」
突如生まれた紫の壁に目を見開いたバルカンの正面、ナツ達からは振り返らなければ見えない位置から声がした。ルーシィがはっとしたように顔を上げて振り返る。
一言飛ばしたその人は凍った足元を気にも留めず駆け強く地面を蹴り、言われた通りさっと身を低くしたナツの上を跳んでいく。空中で右足を構え、張られた障壁を当たり前のようにすり抜ける。
「斧、返してもらうぞ」
「ウホォッ!!」
そのまま、斧を持ったまま混乱しているバ
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