火竜と猿と牛
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指を突き付けるナツに思わずツッコみ―――ふと、ルーシィの脳裏を一つ思考が過ぎった。
それはきっと、本来考えてはいけない事だった。けれど、一度考え出したら止まらない。
(ま……待って…!!冷静に考えたら…マカオさんってまだ生きてるのかしら……)
ロメオの話では、マカオがこの依頼を受けて既に一週間。三日で帰ると言っていた辺り、一週間分の荷物はまず持っていない。更にこの雪山の猛吹雪、相手は凶悪モンスター。マカオというのがどれほどの魔導士なのかは知らないが、無傷ではないだろう。
食料、寒さ、怪我……考えれば考える程、嫌な方に向かっていく。
(もしかして…マカオさんはもう……)
だからマカロフは、救援を出さなかったのではないか―――?
「ウホホ」
「おおっ!!通じたっ!!」
視界の隅で、にやりと笑ったバルカンがナツを手招くのが見えた。
「どこだ!!?」
招かれた先は穴だった。猛吹雪が激しい勢いで流れていくのが見える。四つん這いになり穴から外を見るナツの背後、こっちだと示すように指を向けたバルカンの手が―――動く。
指を揃え、掌をナツの背中に向け、曲げた肘を一気に前へ。
「あ」
どかっ、と音がする。やっちまった、と顔を歪めたナツの声が、叫びとなって徐々に遠くなっていく。
無防備な彼を、後ろからバルカンが突き落とした。その様子を、ナツが落ちていく様を、ルーシィは見ていた。
「……ん?」
巣になりそうな穴を覗いては外れ、を繰り返していたニアが、何かに引っ張られたかのように目線を右に向けた。
目に映るのは相変わらず白一色。寒さという意味ではともかく、視界を遮ってきて鬱陶しい猛吹雪。それ以外にはうっすら木のようなものが見えるなあ、くらいの景色で、けれど何かが見えた気がして首を傾げる。
《どうかしたのかい?》
「いや…今、何か……」
見えたような、聞こえたような。そんな曖昧なもの。
問うたマーリンにそんな風に答えると、彼もこてりと首を傾げた。
《雪の塊でも落ちたのかな?》
「だとしたら何かがいる可能性があるな。…上か?」
《多分ね。まあ、行くだけの価値はあると思うよ。大丈夫、何かあったら私が守ってあげよう!ただし守るだけだから、バルカンでも出たら自力で退治しておくれよ!》
「了解。行くぞ」
そのまま二人は飛び上がる。
徐々に遠くなる叫びは吹き荒れる風の音に隠れて、どちらの耳にも届かなかった。
「ナツ――――!!!」
「男……いらん。オデ……女好き♪」
ナツが落ちた穴は、バルカンの巨体が邪魔で覗けない。気づくと同時にその右にある穴に駆け寄る。その間にも、ナツの絶叫が吹雪に呑まれて聞こえなくなっていく。
「やだ
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