火竜と猿と牛
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ーテイル》に入ったとして、嬉しいか?」
「うん!!……あ、でも…オレが今こう言ったせいでニア兄のしたい事が出来なくなっちゃうのは嫌だな…けど、ニア兄が入りたいって思って入ってくれたら、凄く嬉しいよ!!!」
即答したロメオの笑顔に、ニアはどうにか笑って見せた。
《変わらないねえ、ニアは》
ロメオと別れ宿に戻ったニアに、静かに笑ったマーリンが言う。
《誰かに必要とされないと団体に属せない。思えば私達との時もそうだったね。彼女が君を必要として、いてほしいと君に言ったからこそ、君は私達の仲間になった》
「……仕方ないだろ。本当なら、オレは忌み嫌われる立場なんだ。そのオレがどこかに属するなんて、本当は間違ってる……」
ベッドに腰かけ俯いたニアが、力なく言う。
「だけど、一人は寂しい……それを、嫌ってほど味わった。だからお前達を手放せない。だからどこかにいたい、いても許される理由が欲しい。何でお前がって聞かれた時に、だってコイツがいろって言ったって…そんな言い訳がないと、オレはどこにもいられない」
ぽふり、横に倒れる。
「……怖いよ、マーリン」
漏れたのは、誰にも聞かせない弱音だった。
「怖い…そう、怖いんだ。あんなに真っ直ぐ笑ってくれるロメオを言い訳にするのが、怖い。メンバーでもないのに優しくしてくれるアイツ等を言い訳にするかもしれない、オレ自身の事が怖くて仕方ない」
無音で近づいたマーリンが、そっとフードを外す。
「けど、一人にもなりたくない。……オレは、どうしたらいいんだろうな」
はっきりと見えた顔。水色の目は、苦しそうに伏せられていた。
《……彼女なら、こう言うだろうね。それなら私を言い訳にしなさい、と。それで貴方がここにいてくれるなら、私は貴方にとっての何にだってなる、と》
その頭を優しく撫でて、在りし日を思い出したマーリンは言った。
《ねえ、ニア。君は、君の望む事を望むままにすべきだ。私はそう思う》
いつも誰かの為にしか動けず、けれどそれは決して優しい訳ではなかった彼へ。
ただそうする事でしか、自分はここにいてもいいのだと肯定出来ない青年へ、マーリンは言葉を紡ぐ。
《もう少し、考えるといい。悩んで、考えて、迷って……これがいいと思える結論が出たら、次はその時に私を呼んでおくれ。……君の決定を、君の苦悩を知る唯一である私に、聞かせておくれよ》
ね、と微笑むと、ニアは小さく、けれど確かに頷いた。
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