火竜と猿と牛
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きナントカでもないただの一般人だぞ?」
《解ってないなあニアは!私も含め、世話焼きの自覚がある奴は大体君の面倒が見たいんだよ。何てったって君は、放っておいたらロクに食事も摂らないくらい生活面での不安の塊みたいな奴だからね。放っていく訳にはいかないだろう?》
「別に空腹は気にならないし…限界が来たら食べるくらいで十分だろ?」
《ほらそういうところ!そういうところが可愛いんだって。何かこう……弟見てる感?》
「お前の可愛いの基準が解らん…」
呆れた声色で呟いて、マーリンに向けていた目を雪山に移す。
飛べば山頂まで然程時間はかからない。ロメオの話ではバルカン退治の仕事だったらしいから、適当にバルカンが生息していそうな穴でも探せば何とかなるだろう。ある程度高所、穴、と探すべきポイントをいくつか絞り、マーリンを見やる。
「そっちの準備は」
《いつでも行けるよ。いやあ、体があるのに寒さを感じないっていいね。雪山だろうが砂漠だろうが、体への影響が一切ない!》
屈託なく笑う彼に頷いて、更にふわりと飛び上がる。自分の周囲を流れるように避けていく吹雪にちらりと目をやって、真っ先に目に留まった穴目がけて軽く宙を蹴った。
《そういえばさあ》
「ん?」
《さっき、何か言ってなかったかい?助ける必要のある奴が出来たとか何とか》
横を飛ぶマーリンの問いに、ニアは涼やかな表情で返す。
「多分オレの勘違いだろう。気にしなくていい」
――――ちっとも気のせいなんかじゃないのだった。
「『何でこんな事に…なってる訳ー!!!?』……と、申されましても」
「ウッホウホホ、ウホホホ〜」
「何かあの猿、テンション高いし!!!」
ハコベ山のどこかにある洞穴の中。困ったように顔を覆うホロロギウムの中で、ルーシィは叫んでいた。その周囲では、手を振り上げたり足を上げたりと忙しなく踊るバルカンが鳴き声を上げながらぐるぐる回っている。
訳も解らず連れ攫われた、と思ったらこれだ。一緒にいたナツは「喋れんのか」なんて呑気に言っていたし、これまで何かあると真っ先に駆けつけてくれていたニアはそもそも一緒に来ていない。そして凶悪モンスターなんて言われているバルカンを倒せる自信は、ルーシィにはない。
「ここってあの猿の住処かしら。てか、ナツはどうしちゃったのよー……」
「女♪」
「!!」
ガラス戸にぴとりと頬をくっつけ周囲を探る。が、見えるのは白っぽい岩の壁と鋭い氷柱、それから―――気づけばガラス戸にぐっと顔を寄せている、バルカンの顔。気持ち悪いくらい緩んだ顔がにゅっと視界に入り、思わず顔を引いた。
かなりの至近距離で見つめ合う。じっと目を逸らさずに見つめられるのは(距離が近いという事も含め)ニアにも時々やられる事
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