第52話
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ある。民だ。
官渡で暮らしていた魏民達が軍主導の下、許都に向けて移動している。
その足は余りにも鈍足で、彼らが持っている荷物がさらに進行速度を遅くしていた。
袁紹達は初め、この敗走を罠だと考えていた。
相手はあの曹操率いる魏軍、投石機の破壊だけで勝てる相手だとは思えなかったのだ。
つまり罠の類、敗走に見立て陽軍を釣り出す策である可能性が高いという結論に至った。
しかしどうだ、魏軍が連れている住人達がその嫌疑かき消している。
兵が民に扮している可能性も考慮したが、多くの老人や子供、女が追従している。
その事実が魏軍の敗走を決定付けた。
「……」
少しずつ遠のいて行く魏軍見ながら、袁紹は動けずにいた。
あまりに“あっけない”のだ。それと同時に、手応えが感じられずにいる。
確かに自分達は勝てる準備をして戦に望んでいる。兵力も、策も、勝って当然の規模だ。
だが何だこの違和感は。まるで、この状況が誰かに仕向けられたかのような――。
――ありえない。
袁紹は自身の中に生まれた違和感を、頭を振ってかき消した。
もしも今の状況が魏軍にとって想定内だったとしたら、その誰かは陽軍の動きを予測しきった事になる。
悪天候の中、少数で敵陣に乗り込み投石機を破壊した華雄を含めてだ。
彼女の活躍は陽軍としても想定外のもの、それを外部の魏軍が想定して策を……?
「麗覇様、兵達が逸っています」
令を出さない袁紹に桂花が声を掛け、風と詠も頷く。
彼女達軍師も袁紹と同様に違和感は感じていたが、それを踏まえた上で吟味、追撃を進言していた。
一番怖いのは投石機だが、余分にあるなら戦略的に考えて白馬で運用したはず。
軍中に隠す事の出来る隠匿性は確かに脅威だが、官渡から出てきた物資の中にそれらしいものが無い事は、物見達の報告で明らかになっている。
次点で警戒すべき落とし穴のような罠だが、陽軍に被害を与えられるものが僅かな時間で作れるはずも無し。
何より、魏軍へと続く地は彼らが踏み荒らした後だ。あるはずもない。
「追撃開始だ!」
『オオオオオオオオオオオォォォーーーッッ』
結局袁紹は、自身の中にある違和感を拭いきれないまま軍を動かした。
今も頭の中で警鐘が鳴り響いているが、慎重過ぎても駄目だ。
石橋を叩いている間に好機を逃し、問題を先送りにしていては意味が無い。
反袁紹派と張勲の件が良い例だ。後回しにせず行動していれば面倒は無かった。
それを思い出し、無理矢理に意識を切り替えた。
逃げる魏軍に対して横一列、横陣で足並みをそろえて追いかける。
相手の恐怖を煽る為だ、数の優劣を明確に見せ付けることで士気を下げ
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