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真剣で私に恋しなさい!S〜それでも世界は回ってる〜
18部分:第十六話 夏祭りと約束
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ね。やっぱり男の子だ」
この手が、何度も私を守ってくれた。何度も助けてくれた、大きくて、温かい手。
「ありがとう。燕ちゃんは柔らかいね。優しい手だ」
「……恥ずかしいこと言うね、悠里くん」
偶にこういう事をサラリと言うあたり、悠里くんって知らず知らずの内に何人も女の子を落としてるんじゃなかろうか?
でも自分で「モテない」って言ってるけど、ホントは自分で気づいてないだけだと思う。
そんな事を考えながら、私は悠里くんと一緒に向かう。
悠里side
「着いたよ。ここがお気に入りの場所」
「うわぁ……」
石段を登って山道を歩くと、そこは木が開けて見晴らしがいい所に出た。そこからは町が一望でき、街の夜景が広がっていた。
「凄い……」
「気に入って貰って嬉しいな」
いつの間にか、この夜景に魅入ってしまう。二週間だけだったけど、この町で過ごした事に感慨深さを覚えた。
「悠里くん」
「ん?」
「ありがとう」
「……どういたしまして」
なんか照れ臭くなって、少し照れながら言った。夜景を見ていると、燕ちゃんは握っていた手を強く握ってきた。それに答えるように俺は握り返すと、お互いを見て笑った。
翌日、俺は鍋島さんと燕ちゃん、久信さんに見送られ、京都駅に来ていた。
「二週間、本当にありがとうございました」
「いやいや、お礼を言うのはこっちだよ。今日、燕ちゃんがいるのも、また2人で暮らせるのも、悠里くんのお陰だ。本当にありがとう」
「悠里、そろそろ電車だろ。行かないとマズいんじゃないか?」
「あ、はい」
「悠里くん、これ」
燕ちゃんはビニール袋を俺に渡す。中はわからないが、お土産だと言う。
「元気でね……」
寂しそうに燕ちゃんは言う。それを見て俺は少し笑って、頭を撫でた。
「来年、また来るよ。約束する」
「絶対だよ?」
「うん」
2人で約束を交わし、また会う約束を交わした。一年後の夏に再会の約束を。
この後、俺が川神に帰ってからはファミリーの洗礼を受けた。あっちで起きた事はもう知っているらしく、それで落ち込んでいた俺をみんなが励まそうとしたらしい。……なんとも我らがファミリーらしいことだが、ここで俺も踏ん切りが着いた。
確かに悲しい事だったけど、俺には仲間がいる。
『俺は……1人じゃない』
だから、前に進める。
だから、生きれる。
悩むのはやめた。
今は進もう。
未来へ。
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