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暁ラブライブ!アンソロジー〜ご注文は愛の重たい女の子ですか?〜
黒澤流二段蹴り 【透】
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「……知ってたよ、ほんとはね」

「え……?」

 さっきまでとは違う、精悍な声色が頭上から降ってきて、俺は顔を上げた。

「お兄ちゃん、ルビィのことがかわいそうだから一緒にいるなんて言ってくれてるんだよね」

「な、何を言ってるんだ?そんなわけない……そんなわけないだろうが!」

「こんな時まで気遣ったくれるんだもん。やっぱりお兄ちゃんは……優しいね」

 ルビィの手が、俺の頭を撫でる。

「でも......ルビィ、ちょっと......良い子でいるのに疲れちゃったから......」

「おいルビィ……何を言って」

「どう頑張ってもルビィたちが結ばれることはないんだよ……ルビィはここから出られないんだから。だからもう……いいよね……?」

 その手が俺の頭を離れ、ルビィは立ち上がった。手錠が入っていた穴の近くまで行き、そへ手を伸ばす。そして出てきたルビィの手に握られていたのは、短刀。それを、自らの胸に持っていく。

「このために手錠をかけたんだから。邪魔できないようにね」

 その一言で、頭が真っ白になった。

「や、やめろおおおおぉぉおおおお!!」

「来世では……普通に恋愛をしてみたいな……」

 俺の叫びに耳を貸すことなく、ルビィが、自らの胸に短刀を突き立てた。深々と刺さる短刀。瞬く間に吹き出す鮮血。

 その時だった。

 火事場の馬鹿力か、古い鉄が錆びて弱くなっていたのか、その両方か。

 つけられていた手錠の鎖が、はずれた??????

「ルビィっ……!」

「あ……お兄ちゃん」

 俺は血に染まる畳を踏みしめ、ルビィのもとへ駆けた。

「くそっ!何やってんだよ!!死んじゃ何もかもおしまいじゃねえか!」

「でも、ルビィはお姉ちゃんみたいに頭が良くないから、こんな方法しか思いつかなかったよ……」

「だからって……!」

「なら……どうすればよかったの……?」

 俺は何も、答えなれなかった。

 部屋には、命の火が消えかかっているルビィの呼吸だけが聞こえる。俺は、どうすることもできなくて、目を閉じた。

 咄嗟に思い浮かんだ行動を、吟味することなく実行に移す。

「……ルビィ……!」

 俺はルビィの胸に刺さっていた短刀を抜き取り、俺の胸に突き刺した。

 今まで味わったことのない激痛が走る。意識が飛びそうなほどの痛みだったが、耐え、さらに短刀をねじって傷を深くしていく。そして、片方の手でルビィの体を抱き寄せた。

「愛してる……ルビィ」

「わぁ……嬉しいな……でもどうしてこんなこと……」

 既に温度が低くなって、死人のように生気を感じないルビィの口角が僅かに上がり、力のないその手が俺の背中に
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