暁 〜小説投稿サイト〜
暁ラブライブ!アンソロジー〜ご注文は愛の重たい女の子ですか?〜
黒澤流二段蹴り 【透】
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ているような、胸糞の悪い寂しさを感じさせた。

 夕闇に浮かび上がる黒澤家のシルエット。夜の闇に溶けかかっているそれが、まるでゲームでよくあるような呪いの屋敷か何かのように見えた。 

 呪いの屋敷......か。

 あながち、間違っていないな。
 


 数日が経った。相も変わらずに俺は毎日あの部屋に通い続けている。

 雨の日だろうがなんだろうが、ルビィはずっとあの部屋で俺のことを待ち続けているのだ。そして、俺の顔を見た途端に俺にしか見せない笑顔を浮べて、抱きついてきてくれる。だから、今日もあの部屋に行く。

 授業が終わった瞬間に荷物を素早くまとめて教室を出る。特に仲良くもない同級生たちとの挨拶もほどほどに駐輪場まで来て、自転車を走らせる。

「あ!おーいっ!」

「え……小原か」

 校門を出て信号待ちをしていた俺は、遠くからこちらに手を振っている金髪の少女に目を遣った。小中と一緒だった友人、小原だった。そしてその傍には同じく小中と一緒だった松浦、そしてダイヤがいた。この三人はいつも一緒なのだ。

「久しぶりだね、今帰り?」

「ああ」

「なら私たちと遊ばない!?明日は土曜なんだしいいじゃない」

「いや、今日はやめとくよ」

「えー?あ、わかった!ダイヤがいるからでしょ?元カノだからって遠慮す????」

「鞠莉さんっ!」

 ダイヤが小原の言葉を遮った。周囲の人たちが何事かとざわつく。

「......昔の話ですわ」

「そう......ごめんなさいね、無神経なこと言って」

 小原はきっと、俺とダイヤの寄りを戻そうとして言ってくれたのだろう。この人は人の感情の機微に敏感なタイプだから、誰かの癪に触るような言葉を言うことはないのだ。それをわかっているのか、松浦も申し訳なさそうな視線を向けてくる。

 すまない、と二人に心の中で謝り、次の言葉を紡ぐ。

「いや、いいよ。それよりもう行っていいかな、これから行くところがあるんだ」

「......ルビィのところですか?」

 俯いていたダイヤが顔を上げた。眉間に皺が寄ったその表情が、彼女の言いたいことを代弁している。

「もちろん」

「もう……あの子は……」

「……わかってるよ、けどさ、それをお前が言うのは……酷じゃねえか」

 ダイヤは、何も言い返してこなかった。

 ダイヤが悪いわけじゃないのはわかっている。ルビィがこんな扱いを受けているのは黒澤家の意向であって、決してダイヤのせいじゃない。むしろこいつはルビィの姉として、味方になろうとしてくれていた。けれど、どうにもならなかったのだ。

 ダイヤは黒澤家の正統な後継者として育てられ、ルビィは忌み子として世間の目に晒される
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ