第五章
[8]前話
「本当の剣道家にはなれないかもな」
「今でもですか」
「うむ、そう思う」
「しかし先生は九段では」
「段の問題ではなくな」
「本当の、ですか」
「剣道家になるのは無理かも知れない」
フーシェにこのことは残念そうに述べた。
「ずっとな」
「僕はそうは」
「いや、わしが思うだけだ」
「そうですか」
「自分でな。本当の剣道家はもっと違うと思う」
心の中に遥かな上を見ての言葉だった。
「わしはまだ本当の剣道家じゃない」
「七歳から九十年近く毎日されていても」
「まだだ」
「そうですか」
「まだ本物じゃない」
このことは残念そうに言うばかりだった、穏やかな古田も。その彼の話を聞いてだった。フーシェは彼との手合わせの後で友人達に話した。
「先生が何故今も剣道を出来るのかわかったよ」
「おお、そうなのか」
「わかったのか」
「そう思う、毎日の修行をして動きを掴んでいつも動ける様にする」
この二つがというのだ。
「それだよ」
「そうそう、剣道ってそういうものなんだよ」
「毎日するものだしね」
「かなりの年齢でも出来るんだ」
「それこそあの先生みたいになっても」
九十を過ぎてもというのだ。
「出来るものでね」
「そしてどんどん強くなっていけるんだ」
「九十を過ぎても強くなれる」
「そうしたものなんだよ」
「そうだね、あの先生位になることも出来るんだね」
フーシェはしみじみとした口調になっていた。
「よくわかったよ、あの先生のことも剣道のことも」
「そして他のスポーツもだね」
「毎日することが大事だともだね」
「わかったよ」
こうも言うのだった。
「よくね」
「そうだね、じゃあ君もだね」
「しっかりとやるんだね」
「フェシングもテニスも」
「そうしていくよ、年齢の問題じゃない」
強い声で認識の言葉を出した。
「九十過ぎてもやっていくよ」
「そしてひたすら上を目指す」
「高みをだね」
「そうしていくよ、勿論学問もね」
フーシェは友人達に笑顔で答えた、そしてだった。
彼はこのことを終生日本で学んだ最も大事なことだと語り続けた。努力を忘れない立派な人物だと言われる中で。
SWORD SUMMIT 完
2017・1・30
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