第四章
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「掴むことだ」
「掴む?」
「稽古と勝負でな」
「つまり剣道自体で、ですか」
「そう、掴むことだ」
このことが大事だというのだ。
「それが大事だ」
「剣道を通じて掴む」
「動き、自然なそれを」
「力や技、身のこなしだけでなく」
「体力も大事にしても」
九十代にもなれば当然体力は落ちる、これは年齢と共にそうなっていくので仕方ないと言えばそうなる。
「それでもだ」
「より、ですか」
「剣道自体のものを」
「剣道自体を」
「そう、自然なな」
動き等をというのだ。
「そうすればわしの様に動ける筈だ」
「九十を過ぎてもですね」
「自然と歩く様に」
「そういえば」
ここでだ、フーシェも気付いた。古田のその動きはどういったものかを。
「先生の動きは自然でした」
「歩く様な」
「はい、全く無駄がなく流れる様な」
「それだ、そうした動きを掴むことだ」
「そうすれば九十を過ぎてもな」
「動けますか」
「そうなる筈だ」
フーシェにこう話した。
「誰もな」
「そうですか、九十を過ぎても何故剣道が出来るか」
「それがわからなかったか」
「はい、どうしても」
「剣道、おそらく他のスポーツもそうだろう」
古田はフーシェにさらに話した。
「極端に体力がいるスポーツにしても」
「そのスポーツの動きを掴めばですね」
「かなりの高齢になっても出来る筈だ」
「そうですか、わかりました」
ここまで話してだ、フーシェは頷いた。
「ようやく。何故先生が今も剣道を出来るのか」
「そうか」
「はい、動きですね」
「要するには」
「歩く様な、そしてやはり練習はですね」
「剣道で言うと稽古はな」
「続けるべきですね」
このことも言った。
「やはりそうですね」
「それがいい、毎日身体を動かさないとな」
「歩かないといけないですね」
「さもないと動けなくなる」
「続けることも大事ですね」
「その通りだよ、では今日も明日も」
穏やかな声は変わらない、今も。
「稽古を続ける」
「そうされますか」
「幾つになってもな、ただ幾つになっても」
今は九十五でもうすぐ九十六になる、しかしというのだ。
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