第二章
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「百聞は一見にというしね」
「そうそう、そう言うしね」
「日本の諺だね、ならね」
「その諺に従ってだね」
「よし、見てみよう」
彼は決意した。
「そうしてみるよ」
「実際にだね」
「そんなことは有り得ないと思うけれどね」
「実際に手合わせをしてみてだね」
「それが本当かどうか見てみるよ」
九十代の古田がまだ剣道をしていてしかも強いかどうかをというのだ。
「僕のこの目でね」
「ではね」
「うん、じゃあ古田先生に実際に話をしてみるよ」
こうしてだ、フーシェは自ら古田のところに行ってだった。そのうえで。
古田に手合わせを申し出るとだ、彼は快諾して言ってきた。
「わかった、ではな」
「宜しいですか」
「それで何時するんだい?」
穏やかで落ち着いた声だった。
「今日かい?」
「いえ、先生が都合のいい日に」
「なら何時でもだよ」
これが古田の返事だった。
「わしは構わないよ」
「そうですか」
「ああ、だから今日でも明日でもな」
「宜しいですか」
「いいとも」
やはり穏やかで落ち着いた声だった。
「フーシェ君だったね」
「はい」
「君がいい時間でな」
「では今日ですね」
思い立ったが吉日、日本のこの言葉を思い出してだ。フーシェは言った。
「お願いします」
「それでは早速はじめるか」
「着替えてきますので」
「そちらのレイピアもだね」
「出してきます、ですが」
「ああ、突くからね」
「剣道の面の間ですが」
この間からレイピアが入ると危険だというのだ。
「そこにカバーをしましょう」
「そうだね、そうした気配りもして」
「こちらも防具は着けます」
剣道のそれもというのだ。
「フェシングの服の上から」
「ははは、大変だね」
「フェアにすべきですから」
フーシェはこのことは強い声で言った。
「フェシングは」
「剣士のするものだからだね」
「はい、ハンデや卑怯はあってはなりません」
絶対にとだ、フーシェはさらに強い声で言った。
「宜しくお願いします」
「それではそうしてね」
「やりましょう」
こうしてだ、フーシェは古田と手合わせをすることになった。だが剣道と稽古をする格好になってもだ。彼はまだ言うのだった。
「本当にかな」
「先生が剣道を出来るかどうか」
「そのことは疑問だというんだね」
「九十代でスポーツが出来たら」
それこそというのだ。
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