第八章
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「それで」
「そう言うけれどね」
「何だよ、言いたそうだな」
「というかそこで大和撫子って言わないのね」
「言うかよ、金髪お姉ちゃんは浪漫なんだよ」
「浪漫って」
「そういう御前の好きな人軍人さんっていうけれど誰だよ」
それは誰かとだ、健太郎は聞いた。
「どんな人なんだよ」
「東郷平八郎様みたいな」
「おお、爺さんじゃねえかよ」
「あの格好よさがわからないなんて馬鹿ね」
「思いきり爺さんだろ、大体もうお亡くなりになってるだろ」
「それでも理想のタイプなのよ」
沙織は目を怒らせて健太郎に言い返した。
「東郷様のよさがわからないなんて罪ね、じゃああんたの趣味は有名人だと誰よ」
「そうだな、マリリン=モンロー様だな」
「あんたの人もお亡くなりになってるわよ、というか古いわね」
「東郷さんの方が古いだろ」
「大きなお世話よ、大体モンローさんって金髪じゃなかったわよ」
「あれっ、そうなのか?」
「あの髪染めてたのよ」
このことを指摘するのだった、事実である。
「知らなかったの?」
「はじめて聞いたぞ」
「そうだったのか」
「というか思いきりレトト趣味じゃない」
「御前に言われたくないよ」
「こっちもよ、しかし」
ここまで話してだ、沙織は笑って言った。
「あんた面白いわね」
「御前もな」
健太郎も笑って返した。
「東郷さんか」
「モンローさんね」
「ちなみに尊敬する人はベートーベン様よ」
「俺はモーツァルト様だ」
「凄まじい人格破綻者だったんでしょ、その人」
「そっちも異常なコミュニケーション障害者だよな」
このことも実際だったとのことだ。
「尊敬出来るか?」
「そっちもね」
「好きな映画は特撮だよ」
「戦争映画よ」
「全然女の子らしくないな」
「というか子供みたいじゃない、特撮って」
あれこれと自分達のことを話していく、そうした話をしているうちに沙織の兄の茂が帰って来た時二人は今度はお風呂の入り方の話をしていた。彼はその話を聞いて二人に問い返した。
「何話してんだ?」
「いや、お話が巡りに巡って」
「何かそういうお話になってさ」
「何ていうかね」
「今はお風呂のお話をしてるんだよ」
「訳がわからないな、まあ留守番の間別に何もなかったんだな」
茂はこう解釈した。
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