第百二十三話
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――ちょっと待ちなさい! 豪華景品はあたしのものなんだか」
「アメリカから帰ってきたら覚えときなさいよ!」
流石にグウェンが気づいて追ってくるものの、その声はセブンの怒りの声によってかき消されてしまう。セブン本人にイベントのことを気づかれない偽装工作、セブンがシャムロック本部から脱走するタイミング、そして自分がいない代わりに投入される人手。どれを取ってもスメラギの仕業であり、逃げている途中だというのにセブンの届くはずもない声が止まない。
「ちょ、ちょっと待ちな」
「VR空間とはいえ! 不特定多数の人に狙われるって! あんたはわたしが大事なのそうじゃないの!」
「セブン、そろそろ」
「あ……ごめんなさい……」
ようやく俺たちが置かれている状況を思い出したらしく、俺に手を引かれながらセブンは赤面して大地を駆ける。幸いにも街中だったということで、路地裏など追跡者を撒けるポイントは多数ある。ただし不幸なのは、グウェンが見た目通りの敏捷一極化ビルドかつ、追跡に慣れているということか。
「……ん?」
「ふぅ……ショウキくん、どうしたの?」
今は上手く逃げられてはいるものの、やはり徐々に追い詰められてしまっている。少しだけ休憩がてら路地裏の見えづらい場所に隠れると、見知った人物が大通りを歩いていたことに気づいた。
「キリト……?」
黒いコートに身を包んだスプリガンの少年。この状況なら助けになると話しかけようとしたものの、どこか違和感を感じて尻すぼみになってしまう。とはいえキリトには聞こえたらしく、路地裏に隠れているこちらを見つけると――顔を赤くして逃げだしていった。
「ちょ、ちょっと?」
「……おい待て!」
グウェンから隠れながらも、俺たちはその挙動不審なキリトを追っていく。逃げる側になると同時に、追う側にもなるという不思議な体験を味わいながら、曲がりくねった路地裏の中を走っていく。
「……こんなところまでよく作り込んであるのね……」
「待てって……うわっ!?」
興味の対象が路地裏まで作り込まれた街角に移ったセブンの呟きを聞きながら、追いついた俺はキリトの肩を掴む……掴んだ、瞬間。俺は手から電撃を感じた後に吹き飛ばされ、手を掴んでいたセブンを庇いながら家の壁に勢いよくぶつかった。
「ててて……ハラスメント警告ってこんな感じなのね……」
「ショウキさん、セブン……すまない! 大丈夫かい?」
そして俺の画面に表示されるのは、ハラスメント警告。異性のプレイヤーに必要以上の接触をした際に発動する機能で、混乱する頭で目の前のキリトのような人物の謝罪を受ける。こちらの名前を知っている、どうやら知り合いのようではあるが――とまで考えたところで、その
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