第百二十三話
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保護者のスメラギがいないことを、セブンは楽しそうに熱弁する。確かにスメラギは多少ながら過保護なところがあり、このALOに必要以上の混乱とセブンへの危機を未然に防いではいたが、セブンからすれば不満は多くよく脱走していた。まるで家族が出かけた中学生のようなはしゃぎように苦笑しながら、俺たちは支払いを終えながらレストランから出て行く。
「どこ行こうかしら〜……って言いたいところだけど、目的地は決まってるの。第十二層の草原フィールドでね、お姉ちゃんに戦闘を教えてもらうの!」
「ああ、せっかくのVRMMORPGだからな。戦闘も楽しむポイントだ」
そして街中を転移門目掛けて歩きながら、嬉しそうに姉のことを語るセブンと、知ったような口を聞きながら話す。すっかり姉妹揃って仲良くなったようで何よりだが、少しだけ、その楽しげな表情に陰りが差した。
「でも……ちょっとしたら、わたしはアメリカ行っちゃうのよね……」
……スメラギがアメリカで仕事の下準備をしているということは、つまり、そういうことなのだろう。世界的な人気アイドルとVR空間の研究者、という二足のわらじを履いているセブンは、本来ならこうして一緒に街角を歩く暇すらないのだ。
「……ごめんごめん! その分、いっぱい遊んでやるんだから! そうだ、ショウキくんも教えてくれる? ソードスキルのこととか?」
いつかに水泳を教えてくれたみたいに――と、雰囲気を暗くしてしまったことを謝りながら、やけにテンション高くセブンは続ける。
「悪いけど、それは無理な注文なんだ」
「え? あっ……例のその、茅場晶彦の」
茅場晶彦の、というのは俺にのみ聞こえるほどの音量で、セブンはVR空間の科学者としての表情を見せながら語る。スリーピング・ナイツとシャムロックの戦いが終わった後、大体のこちらの事情は話しており、俺のデータに仕込まれた『ソードスキルが使えない』というバグもその一つだ。
茅場晶彦が直々に仕込んだプログラムは、リソースを同じとしたこのALOでも継続している――というのを、セブンはこちらを興味深げに眺めていた。アイドルらしく整った顔にまじまじと見つめられ、自然と照れてこちらの視線を逸らしてしまう。
「な、なんだ」
「いや……だって『あの男』が直々に組んだプログラムなんて、あのカーディナルに匹敵する代物よ? ねぇ、ちょっとショウキくんのデータさ」
「断る」
「……まだ最後まで言ってないじゃない」
最後まで言われずとも、セブンの言いたいことは伝わってきた。要するに、茅場の仕込んだプログラムを解析させて欲しいとのことだろうが、そのプログラムとやらは素人目にもデータと一体化している。さらに茅場のことだ、何か仕込んである可能性も否めず、プログ
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