第五話 バラ園にて
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ころはあっても頼りにはなる。彼が敵に回れば厄介な事になるのも確かだ。
「予はこの帝国を再生できる人間を探していた。そしてそちを見つけた。嬉しかったぞ、ラインハルト・フォン・ミューゼル。そちならこの帝国を新しく生まれ変わらせることが出来るだろうとな」
「……」
「そちはおそらくゴールデンバウム王朝を滅ぼすであろうの」
「陛下! 弟はそのようなこと……」
「良いのじゃ、アンネローゼ。此処はバラ園じゃ、我等のほかには誰もおらぬ……」
「陛下……」
俺は黙って皇帝と姉上の会話を聞いていた。否定することよりも、俺の野心を知られていたことのほうがショックだった。確かにこの男は凡庸などではない、俺は一体何を見てきたのだろう。
「それでも良いと思っていた。帝国が生き返るのであればの」
「陛下、陛下は帝国が滅ぶとお考えでしょうか?」
恐る恐る皇帝に問いかけた。どう考えても皇帝は帝国の滅亡を前提に話をしている。本気なのだろうか。
「滅ぶであろうの、そちはそう思わぬか」
「……」
答えようが無かった。確かに帝国は混乱している。大貴族が勢力を伸ばし勢力を張り合い始めた。いずれは内乱になる。俺が皇帝になるためにはその内乱が起きる前に確固たる地位を固めなければならない。
「そちには済まぬ事をしたと思うておる。そちを引き立てながら、此処に来てそちを切り捨てるようなことをした」
「切り捨てる……」
姉上が息を呑むのが分かった。だがそんなことよりも皇帝の言葉に興味があった。俺を切り捨てるとはどういう事だろう。考えていると皇帝は俺を見て笑った。
「そちは肝心な所でまだ甘いの」
「……」
俺が甘い? 思わず言い返したくなったが堪えた。今口を開けばとんでもないことを言いそうだ。
「ヴァレンシュタインはこの国を改革するつもりじゃ。そしてブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯、そして軍もそれを支持している。分かるか、そち以外にも帝国を再生できる人間がいると言うことじゃ」
「……」
「帝国を再生出来るのはそちかヴァレンシュタインであろう。その方らは正反対よな。そちが火なら、ヴァレンシュタインは水よ。そちは全てを焼き尽くして新たな帝国を作るに違いない。犠牲は多かろう……。だから予はヴァレンシュタインを選ぶ……、皇帝として犠牲の少ない方法を選ぶ……、済まぬ」
「……」
俺はどう言えばいいのだろう。ふざけるなと怒鳴るべきなのだろうか? だが俺が皇帝の立場ならどうしただろう……。やはり犠牲の少ない方法を選ぶのではないだろうか……。
「ヴァレンシュタインから何か言われたか?」
「……自分に協力して欲しいと」
「そうか」
皇帝は俺の答えにゆっくりと頷いた。
「ラインハルト・フォン・ミューゼル、
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