第五話 バラ園にて
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ている。もしかすると中将は彼らを信じてはいないのかもしれない。だからラインハルト様に協力を求めてきた……。有り得ない話ではないだろう。
「伯爵夫人を奪った陛下が許せませんか?」
「……」
「陛下はミューゼル提督が陛下を憎んでいる事をご存知です、簒奪の意志がある事も。その上で提督を引き立ててきた……」
「馬鹿な……」
ラインハルト様が呆然としたように言葉を出したが中将は首を振って言葉を続けた。
「本当のことです。あの方は凡庸ではない、凡庸な振りをしてきただけです。このままでは帝国は立ち行かなくなる。そう思ったからミューゼル提督に帝国の再生を委託しようとした……」
「……」
誰も声が出せない。あの凡庸と言われる皇帝が実際には違う? そんな事があるのだろうか。
「一度お二人で会ってみては如何です」
「それは」
「会って見ても損は無いと思いますよ。本当の陛下を知っておくべきだと私は思います」
ヴァレンシュタイン中将が熱心にラインハルト様を説得する。ラインハルト様はしばらく迷っていたが、やがて意を決したように口を開いた。
「……会ってみよう」
■ 帝国暦486年7月12日 オーディン 新無憂宮 バラ園 ラインハルト・フォン・ミューゼル
会ってみようとは言ったがその日のうちに皇帝に会う事になるとは思わなかった。ヴァレンシュタインは時間を無駄にしなかった。俺の同意を取り付けるとすぐさまリヒテンラーデ侯に連絡を取り、皇帝との面会を取り付けたのだ。しかも非公式と言うことでバラ園で会う事になっている。
バラ園に向かうと皇帝は既に俺を待っていた。驚いた事に姉上もいる。近付いて跪き、挨拶を言おうとすると皇帝がそれを押し留めた。
「挨拶は無用じゃ、立つが良い。此処では虚飾は無用の物よ」
「はっ」
どうすべきだろう、挨拶はいらないのだろうが立って良いのだろうか。それとも此処は跪いたままでいるべきか。迷ったが姉上を見ると微かに頷くのが見えた。思い切って立ち上がった。そんな俺を見て皇帝は満足そうに笑みを浮かべて頷いている。
「そちが予に会いたいとは珍しいの、予に何を聞きたい?」
「……ヴァレンシュタイン中将がブラウンシュバイク公の養子になるとのことですが……」
俺の言葉に皇帝は黙って頷いた。傍にいる姉上が驚いたような表情で俺と皇帝を見ている。
「あの男もやるものよな、もっとも手強い敵を味方に取り込むとは。流石にブラウンシュバイク公として宮中を凌いできただけの事は有る」
「……」
フリードリヒ四世は楽しそうだ。俺はどう答えてよいか分からず黙っていた。
「そちは残念よの」
「は?」
「もっとも頼りになる味方を敵に取られた」
もっとも頼りになる味方……。確かにそうだ、多少面白くないと
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