第五話 バラ園にて
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困ったように話し始めた。
「実は私はリメス男爵の孫なのです」
「!」
「私の母が男爵の娘でした。母を産んだ祖母も平民で、私達は平民として生きてきた。私がリメス男爵を祖父だと知ったのは彼が死ぬ一週間前の事です。あのような事が無ければ一生知らずに済んだかもしれない」
中将がリメス男爵の孫……。中将の母親が男爵の娘……。皆がその事実に驚き顔を見合わせている。つまり中将は本来ならリメス男爵家を継ぐべき人間だったと言う事か。ならば公爵家の養子になっても不都合は無いのかもしれない……。しばらくの間沈黙が部屋を支配した。
「良く分からない。ブラウンシュバイク公は娘を女帝にするのを諦めたのか?」
ミッターマイヤー少将が呟くように言葉を吐いた。何人かが少将の言葉に頷く。私も同感だ、どうも良く分からない。ミッターマイヤー少将の言う通りだ。このままでは帝国はリッテンハイム侯の物になる。ブラウンシュバイク公はそれを認めるというのだろうか?
「次の皇帝はエルウィン・ヨーゼフ殿下になります。皇后はサビーネ・フォン・リッテンハイム……」
「!」
中将の言葉に皆が息を呑んだ。中将は幾分不愉快そうな表情をしている。
「リッテンハイム侯は娘を皇后にする事で勢威を維持します。リヒテンラーデ侯はこれからも国務尚書として政権を維持する。そしてブラウンシュバイク公爵家の新当主は軍の重鎮として彼らを助ける……」
「!」
つまりブラウンシュバイク公・リッテンハイム侯・リヒテンラーデ侯が組んだということか。そしてブラウンシュバイク公爵家の新当主……、ヴァレンシュタイン中将が軍の重鎮になって帝国を守る……。そう思っていると中将が幾分自嘲気味に笑いを漏らした。
「ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯、そして軍……。彼らはこれまでバラバラで反目していました。しかし今回彼らは協力して進む事を選択したんです。その犠牲が私です」
中将にとっては望んだことではないのだろう。そう思うと思わず溜息が出た。
「断わる事は出来ないのですか? 中将」
ケスラー少将が中将を労わるように問いかけた。無理なのは分かっている。帝国の実力者達が決めたことなのだ。中将に断われるわけは無い。事実ケスラー少将の問いかけにヴァレンシュタイン中将は力なく首を横に振った。
「無理ですよ、ケスラー少将。この件では勅許がおりているんです」
「勅許?」
ケスラー少将が鸚鵡返しに問いかけた。皆驚いたような顔をしている。勅許までがおりている。そこまで相手は本気だと言うことだ。
「ええ、勅許です。フロイライン・ブラウンシュバイクは皇孫ですからね。既に典礼省にも申請が出ています。勅許がおりているのですから却下される事は無い。おそらく明日にも認められるでしょう。私はブラ
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