巻ノ七十五 秀吉の死その二
[8]前話 [2]次話
「だからわしに何かあればまつに聞け」
「わかりました」
「ではその様に致します」
「いざという時は」
「奥方様に」
「しかし殿」
家臣の一人がここで前田に問うた。
「また随分と弱気な」
「何かあったらとか」
「言われますが」
「うむ、どうも近頃な」
背筋はしっかりしている、しかしだった。
前田はまた咳き込んでだ、それで言うのだった。
「妙に身体が疲れたりしてな」
「だからですか」
「こうしたことはこれまでなかったからな」
それ故にというのだ。
「用心にとな」
「そうですか」
「うむ、いざという時のことを考えてな」
そのうえでというのだ。
「まつにじゃ」
「そういうことですか」
「うむ」
こう言うのだった。
「左様じゃ」
「そうですか」
「そうじゃ、まあ念の為じゃ」
前田はこう断りもした。
「世の中何があるかわからぬしな」
「そうですか」
「うむ、そしてじゃ」
前田はさらに言った。
「前田家は残るぞ」
「何があろうとも」
「第一に、ですか」
「このことを考えていきますか」
「そうしていきますか」
「その様に伝えた」
まつにはというのだ。
「後はあ奴に任せろ」
「それでは」
「その様にしていきます」
「ですが殿」
ここで奥村が前田に言った。
「是非です」
「わし自身のことか」
「近頃お疲れの様です」
「休めというのじゃな」
「そうされては」
「うむ、しかし話はした」
まつにというのだ。
「後はあ奴がしてくれる」
「左様ですか」
「それならわかるな」
「はい」
「今言った通りにな」
「そうでしたか」
「ではじゃ」
あらためて奥村に言った。
「その様にな」
「はい、それでは」
「わしの後はもう手は打ってあるしな、しかしわしはな」
「お拾様をですか」
「何とかお護りする、最後までな」
「そうですか」
「義理じゃ」
それ故にというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ