駆け抜ける光
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思議な感覚に戸惑う一面、安らぎも得ていた。それらに身を任せて、体の力を抜き、全てを宇宙とデルタに預けて目を瞑る。何も考えずに、ただ感じる。なるほど、確かにたまにはぼうっとするのも悪くないことなのだろう。
宇宙は、広いな。無限に広がる大宇宙とはよく言ったものだ。この宇宙に進出するために作られたISがあんな狭いアリーナを飛び回るだけの存在になってしまうとはな。うん?宇宙進出にIS?待て、何かがおかしい。目を開き、周囲を見渡す。見逃している何かのヒントはないか。ゆっくりと見渡していると衛星軌道上で最も大きな人工物が視界に入る。ISS、国際宇宙ステーション。ちょうど打ち上げられた物資が搭載されたカプセルとドッキングするところだ。
そうか。見落としていたのはソレか。ISだけでは足りない。整備・補給を行う拠点もなく、そこに行くまでの足が旧世代の産物に頼る必要がある。ISだけでは駄目なんだ。オーフィスのような万能性はともかく、量産型のミドガルズオルム級位の性能は欲しい。あれなら物資を満載した上で600人を宇宙に上げれる。しかも燃料はほぼタダ。推進剤は掛かるだろうが、従来のシャトルなどと同じ量で物資込みで1000倍以上差が発生する。
宇宙開発があまり進まないのはコストが掛かりすぎるからだ。そのコストを大幅に削減できるのがミドガルズオルム級なのだ。作業服は従来の宇宙服でも十分対応できる。むしろ、シャトルの技術などに使っていた資金を宇宙服や工作機械に回せれば宇宙開発は進む。
ああ、そうか。篠ノ之束博士は何も分かっていなかったんだ。誰もが万能ではないということを。だからその道の専門家を集めて、チームを組んで作業を行うということを。寂しい人なんだな、篠ノ之束博士は。
お兄ちゃんやお姉ちゃんのお陰で今ならはっきりと分かる。人というのは一人でも二人でも生きていけない。最低でも三人居て、初めて人としてのコミュニティが完成する。三人いれば派閥ができて対立が生まれるが、それで他者との付き合い方を学んでいく。お兄ちゃんとお姉ちゃんとクラリッサと蘭は皆仲が良いように見えるが、お兄ちゃんはちゃんと順位付けている。お姉ちゃんが一番で次が蘭で最後がクラリッサだ。三人もそれが分かっていて、その上で譲り合ったりしている。あれも一種の派閥だ。対立する時は私をおもちゃにする際の方向性位だな、腹が立つが。
そういう人とのつながりをしてこなかったんだろうな。私もそうだった。だから色々失敗したし、今もしている。この感覚は、多分間違いではない。篠ノ之束博士は今も失敗をし続けているんだ。それが今の私には分かる。世間は篠ノ之束博士を誤解している。この誤解が争いの元となるのか。
お兄ちゃん達のように、他人と誤解なく分かり合えることが出来ないというのは、こんなにも悲しいことなのか。い
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