64.■■■■
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ここは未だにダンジョンの腹の内――まだ安心はできないのだ。
リージュは言われるがままに溶岩が冷えてできた道を伝う。足場の半分程度がアイズの風のおかげで戻ってきたが、まだあちこちに溶岩が固まっていない場所が点在しているようだ。特に爆心地となった『繭』の周辺は未だに熱が強く残っていた。なまじ『繭』の中で爆発した為に、逆に根本の方が被害が少なかったらしい。
その『繭』の残骸の中に――少々美しい髪の一部が焼け落ちているものの、五体満足なアイズの姿があった。コートと鎖は完璧に焼けてしまったのか、元の恰好のまま剣を杖になんとか立ち上がっている。迎えに来たリージュの姿を見ると、アイズの目から小さな涙が零れた。
「わたし、生きてる………」
それは緊張感が途切れたせいなのか、それとも生死の境を彷徨ったが故の実感なのかは分からない。ただ、きっとアイズという少女にこれだけの闘いはまだ少し早くて、生と戦の合間に渦巻く様々な感情がごちゃ混ぜになって抑えきれなくなり、零れ落ちてしまったのだろう。
リージュはそんな彼女の元に歩み寄り、手を取った。
「ああ、そうだ。私もアキくんもあの死神モドキも、誰も彼もが生きている。後は我々が生きて地上に戻ればいい」
「……わた、わらし……何で、勝ったのに……生き延びたのに、涙が……」
「悲しみだけが人の流す涙じゃないんだ。それが何ゆえの涙かは分からなくていい。流れるものは流してしまえばいい……さぁ、泣きながらでいいから戻ろう」
「………ッぐ、うん……!!」
剣を握ったまま、リージュに引かれるままに、アイズはとぼとぼと歩き始める。
もう出ないのではないかと思っていた涙を流しながら。
こうして、長すぎるほどに長かった黒竜との戦いが幕を閉じた。
――そう、思いかけてしまった。
突然二人の目の前に何者かの姿が迫り、べきり、と何かが折れる音がした。
「え………」
「な………」
リージュはレベル7に限りなく近いレベル6だ。アイズも今は泣いているとはいえ若くしてレベル6に辿り着いた猛者。その二人を以てして――『目の前の二人』の速度は常識を超えていた。
「――過ギタル慢心に留意せよ、『酷氷姫』……闘争を萎えさせル」
「が、ががが、あギ………ギ、ハハハハハハハアハアハハハハハハハッ!!!」
そこには、今まで全く動く気配がなかった筈のユグーと、そのユグーの手によって首の骨をへし折られた全身黒ずくめの男がいた。男は首が折れて45度の方向に回ったまま、目だけをユグーに向けて狂ったように笑い続ける。
――なんだ、これは。
この男が闇討ちを狙い、それをユグーが防いだということは辛うじて理解できた。
だが、ならばこれは誰だ。何のためにこん
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