64.■■■■
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いわねー。せめて死体は炎で浄化して海に散骨してあげましょー》
「残念だったな女神。通信機越しによーく音を聞いてみろ。聞き苦しい音が聞こえてくるぞ」
《あーあー、聞こえない聞こえなーい》
《ちょっと煩い!オーネスト、アズは無事なんだね?》
《やれ、これで一安心ですね》
通信機越しにフーとロイマンの安堵した声が聞こえた。
どこか嬉しそうにも見える表情で明後日の方向を向いたオーネストの後ろには、地面に寝かされたまま鼾をかいて腹を掻く緊張感のない男の姿があった。上着を剥ぎ取られ(アイズに渡された)白い素肌が露になっているが、そこには確かな血の巡りが確認される。
それはすなわち、ただ寝ているだけで命に別状はなくなったことを意味する。腹の傷もいつの間にか塞がっており、どうやら乾いた血の感触が嫌で剥ぎ取ろうと腹を掻いているらしい。
ただ、自ら貫いた眼球に突き刺さる氷柱だけは、出血すら凍らせたまま依然としてそこに刺さっている。これがリージュの氷でなけれぱ、また別の死因が待っていたかもしれない。
「ったく、人が何とか守り抜いたのをいいことに気持ちよく眠りやがって……見ろ、鼻提灯なんか膨らませてやがる。峠を越えてなきゃああはならん」
《ちっ》
「ざまぁ見ろ」
心底輝かしい笑顔でそう言い切るオーネスト。もちろん悪意で固められた笑顔である。
というかフレイヤはアズに対してだけ態度の砕け方が露骨というか、その辺にいる性格ひねくれ女にまで格を下げているのは何故なのだろうか。周囲はそのままの方が面白そうなのと聞けばフレイヤが不機嫌になるのが目に見えているのであえて触れないが。
と、歩き出したオーネストが途中でよろめき、下に座り込んだ。
「ぐっ……使った事も碌にない力を、使いすぎたか……」
「アキくん、それ以上は……黒竜ももういないんだし、一旦休もうよ」
「あと少ししたら上の階から救援がやってくる。それまで休むことを勧めておく。無論無視しても構わんが、メリットはあるまい」
「……………」
オーネストの目は先程のやり取りから一転して険しい。ただしそれは周囲の言葉にイラついている訳ではなく、まだ何かを考えているといった様子にリージュには見えた。
「アキ、くん?」
「リージュ、悪いがアイズの奴を迎えに行ってくれ。恐らく魔力を使い切った反動で上手く動けずにいる筈だ。……迅速に、頼む」
内心ではこんなにも素直に「頼む」などと言ってくれたことを喜びたい気持ちがあったが、有無を言わさぬ言葉にリージュは敢えて何も聞かずに頷く。彼が警戒を解いていない理由ははっきりとしないが、戦いが終わって気が緩んでいる瞬間に攻撃を受けると人は崩れやすいことをリージュはよく知っている。
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