64.■■■■
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のアイズの役割とは――『繭』を内側から崩壊させるための『爆弾』だった。
内にある全ての魔力を喰らいつくしてもいい。もう二度と魔法が使えなくなったって構わない。命を削ったっていい。この一瞬、一生の中の刹那の瞬間に、アイズ・ヴァレンシュタインという一人の女が積み重ねてきた闘争の成果の全てを込めて。
「弾け飛べぉぉぉぉぉーーーーーッッ!!!」
日が昇る場所に、風は吹く。
アイズの全身からあふれ出た霊廟の凍風は、体に仕込んだイロカネトランプを通して爆発的に膨張し、魂の殻を突き破るように圧倒的な慟哭となって『繭』から溢れる。圧潰し、尽滅せんと迫る獄炎が一瞬それに拮抗するように胎動し――やがて、力尽きたように氷の風に流された。
生きる為に。
その一言が物理的な力を以てこの世界に顕現するが如く、『繭』から幾重にも重なって放たれた静止の風が灼熱の空間を彩った。
『繭』が破壊される瞬間。
アイズは何者かの悔恨と屈辱、そして無念が抜けていくのを感じた。
その声は、母親に謝っているように聞こえた。
なんとなく、もう二度と会えなくなってしまった両親の背中を垣間見る。
もしかしたらオーネストがそうであるように、黒竜もまたアイズの抱いていた可能性だったのかもしれない。『もしも本当に独りで戦っていたら』という、可能性の同一人物。
アイズは消えゆく意識に、咄嗟に手を伸ばした。
掴めるはずもなく、空を切った。
はっとして目を開けると、まるで巨大な卵が割れたような形状に変わり果て、岩と化した『繭』の中で座り込んでいた。アズのコートは跡形もなく消え去り、鎖もトランプもアイズの体からすり抜けるように落ちる。
もう、そこには自分以外の誰もいなかった。
= =
溢れた風は壁に命中して巨大な氷塊となり、溶岩に触れて岩の道を作り、獄炎に揺蕩うオーネストたちの岩船の周囲の熱を奪い取りながら広がり続け――そして、止まった。『繭』は内側からひしゃげ、もはや何の命の気配も感じられない岩の塊となっていた。
暫くして、ウォノの静止結界が音もなく消失した。
『げ、限界にござる………が、もう攻撃は来ないか……』
「なんとか最後まで結界が保ったらしいな。作戦は成功か」
「ふん、普段生き残る気がない馬鹿が本気で生き残ろうとしたんだ、ある意味当然の結果だろ」
ぽつりとオッタルが呟いた瞬間、どこかウンザリとした口調でオーネストが立ち上がる。
「………アズライールの看病はもういいのか?」
《あら?手遅れ?手遅れなのね?ああ惜しい男を喪ったー。これは『フレイヤ・ファミリア』の長として二度と化けて出ないように丁重に盛大に葬ってあげないといけな
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