64.■■■■
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なるが振り返る暇もない。ただ、生きる為の闘いを続けるだけだ。
永遠のように遠く感じる道がぐんぐんと縮まってゆき、生死を問わない決着の場へと誘われてゆく。
「……ッ!!!」
アイズは、正直に言えば怖かった。それまで戦いで命が懸かったときも、進むことを躊躇うほどの恐怖を覚えることはなかった。それほどにオーネストの作戦はシンプルかつ危険すぎるものだった。特に最後の行程が、誤れば一瞬で絶命して再度挑むことが出来なくなるほど端から見ると無謀だった。
しかし、目を閉じることはしない。
今のアイズの背中は多くの人々の力によって押されているから。
まだ死ねないから、こんなところで終わる訳にはいかないから。
眷属として、家族として接してくれたロキ・ファミリアの皆の為に。
「死に物狂いで前へッ!!」
オラリオ最強の『猛者』に道を譲られ、道を拓けてもらったから。
自らが使える最後の氷の魔法を託してくれた『酷氷姫』の為に。
「決して止まらずッ!!」
自分に代わって彼らを守護してくれているドナとウォノの為に。
作戦を立て、アイズを指名して、お前ならできると言ったオーネストの為に。
「生き残る為にッ!!」
そして、『耐火祝福済みコート』とイロカネトランプを借りたアズライールの為に。
アイズ・ヴァレンシュタインは、『繭』を斬るのではなく、凍らすのでもなく、ただ真っすぐにその中に『飛び込んだ』。
骨さえ灰も残らず焼失する太陽のような熱の中で、しかしまだ死んではいない。
(これが、『繭』の中……ッ!!)
アズのコートを羽織り、残る全ての鎖を体に巻き付け、イロカネのトランプを服の中に巻き込み、魔法によって極限まで魔法伝導効率を高めた上から更に風のバリアを纏い、ほんの一瞬――僅か数秒だけ『繭』の中でも焼き尽くされずに動くことが出来る。
アイズはその中で赤子の産声のような、老人の戯言のような、歓喜のような、諸悪のような、止め処なく渦巻く「いのち」のようなものを感じた。それはほんの一瞬で、別にそれを感じようと思って感じた訳ではない。きっと『繭』の中は一つの別世界だったのだと思う。アイズが感じたのは、きっと黒竜の鼓動だったに違いない。
それも、今から終わる。
オーネストは言った。
『繭』は外から凍らせても中まで冷気は届かない。
かといって冷気の刃で切り裂いた所で、限りなく実体が薄い『繭』には効果が薄い。
『――だったら、内から弾けさせろ』
アイズの役割は、正しくは黒竜を斬ることではなく、破れかぶれの刃は単に少しでも負担を減らすために『繭』を押しのけるのがその本懐。故に、本来
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