第四話 想い
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……」
「平民が、クロプシュトック侯を守ったように皇帝を守るのであれば、今後皇帝の、帝国の藩屏たる役割を担うのは平民であろう、リヒテンラーデ侯の言った言葉だ」
「……ありえない」
呆然としている。俺も同感だ、リヒテンラーデ侯は貴族を否定している。侯でなければ反逆罪に問われてもおかしくない言葉だ。
「そうだな、ありえないことだ。でも滅びかけて、皆わかったのさ。今のままじゃいつか滅ぶと、今回のは一時凌ぎでしかないと」
「……」
「滅びたくなければ、変わるしかないんだ。それを卿に任せようといっている」
「……」
「卿の好きにやれば良い、皆協力する。内乱を起す必要は無いんだ」
アントンがやさしげな口調で話しかけた。エーリッヒの肩に手をかける。
「酷い奴だ、私を身動きできないようにして。だから私は卿が嫌いなんだ」
エーリッヒがそっぽを向いたまま、すねるような口調でアントンを非難した。
「判っている。嫌ってくれてもいい。でも、俺は卿と戦いたくない……」
アントンは苦笑しながら、非難を受け入れた。こいつらはいつもそうだ、喧嘩しても最後は誰よりも理解しあっている。
「……皆、私の命を狙ってくるぞ。不平貴族、自由惑星同盟、フェザーン、そしてミューゼル大将……私を殺す気か、アントン」
「死なせはしない。俺が盾になる、その覚悟は出来てる」
「アントン、それは俺の役目だ。憲兵総監から命令を受けた。卿はエーリッヒを引っ担いで逃げろ」
「エーリッヒがそんな事を望むと思うか、ギュンター」
「……」
「卿には俺の盾になってもらう」
「……わかった」
「有能な艦隊司令官が要るな、どうやら俺も役に立てそうだ」
「小官を帝国に亡命させたのは閣下です。何処までもついていきます」
「……馬鹿だ、卿らは皆馬鹿だ、私は馬鹿は嫌いだ、卿らが大嫌いだ」
泣き始めたエーリッヒを囲んで俺たちは皆笑い出した。幼ささえ感じさせるエーリッヒがどうにもいとおしかった。俺たちが歩むのは地獄だろう。でもそんな場所だからこそ、一人じゃないってのは大事なんだろうと思う。俺たちは大丈夫だ、きっと上手くいく。
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