第四話 想い
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エーリッヒ、どんな気持ちでその言葉を出した。
「内乱を起さなくても貴族たちを叩き潰せる、そう言ったらどうだ?」
内乱を起さない? 冗談かと思ったがアントンの表情はいたって真面目だ。どういうことだ?
「何を言っている?」
エーリッヒも意表を突かれたようだ、呆れたような顔をしている。
「ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯もリヒテンラーデ侯も卿の邪魔はしない、そういうことだ」
「?」
「俺が卿の気持ちを考えないとでも思ったか? ブラウンシュバイク公に卿の気持ちを伝えたさ。卿が貴族たちを憎んでいる、滅ぼしたがっているとね」
「……」
「一向に構わないと言ったよ。利己主義で愚かで役に立たない貴族など必要ないそうだ」
必要ない? 貴族が貴族を否定するのか?
「どういうことだ」
「ブラウンシュバイク公爵家は彼らのせいでもう少しで滅びかけたんだぞ、貴族たちに好意など欠片も有るものか。公はクロプシュトック侯の事を褒めていたよ」
「?」
クロプシュトック侯を褒める? 反逆者をか?
「領民たちが誰もクロプシュトック侯を裏切らなかったと。クロプシュトック侯は三十年間宮中への出入りを差し止められた。その間領内の統治しかすることは無かったんだろう。善政を敷いたようだ」
「……」
なるほど、そういうことか。
「役に立たない貴族より、平民のほうが信頼できる、そう言っていたよ」
「ブラウンシュバイク公だけだ、他は違う」
エーリッヒは何処か投げやりな口調で言った。
「リッテンハイム侯もリヒテンラーデ侯も同じだ。昨日話したんだ」
「昨日?」
「ああ、俺たちの間で話がまとまった後、すぐにリッテンハイム侯とリヒテンラーデ侯に相談したのさ、そのとき貴族たちを潰すという話も出た。二人とも異存は無かった」
「まさか」
エーリッヒが呆れたような声を出した。
「本当だ。理由は同じさ、貴族連合なんて何の役にもたたない。リッテンハイム侯はもう少しでオッペンハイマーに乗せられて反逆者になるところだった。彼の眼には貴族なんて役に立たない裏切り者にしか見えていないさ」
「……」
「リヒテンラーデ侯はもっと過激だった。あの老人にとって内乱は悪夢なんだ」
「違う、帝国の覇権を握る機会だ」
エーリッヒが皮肉そうな口調で言った。
「そうじゃない、そんな事は望んでいない。内乱になれば帝国は疲弊し混乱する。その復旧にどれだけの時間がかかると思う。あの老人はもう七十を越えているんだぞ。彼に内乱の後始末をする時間が有ると思うか? 片付ける前に過労死するさ」
「……」
「貴族とは皇室を守り帝国を守る藩屏であった。しかし昨今、貴族はその本分を忘れ私利私欲に走っている。その結果、帝国を危うくし皇統を危うくした。存続する価値が無い」
「
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